内容
極小曲面とはいたるところ平均曲率ベクトルが消える曲面であり、石鹸膜など非常に多くの例が知られている。極小曲面の存在と一意性を扱うPlateau問題は、最終的にはDouglasおよびRadóによって独立に解かれ、Douglasはこの業績により、1936年に第1回のFields賞を受賞している。また、極小曲面方程式は多くの物理問題の数学モデルとなっており、近年ではPoincaré予想の証明にも使われるなど、他分野に及ぼす影響も計り知れない。
本書は、極小曲面論が研究の原点でもあった筆者による、極小曲面論の基礎を中心として執筆された書籍である。基本を身に付けることができるよう、Euclid空間内に議論を絞り、関数論的アプローチと幾何解析的アプローチ、双方の良いところを取り入れ、解説している。また、前半は多くの知識がなくとも理解できるように、また後半は専門的な議論もあるが、今後の研究の展開につながるように、意識して書かれている。さらに、類書にはあまり見られないPlateau問題の解の存在とレギュラリティについても解説しており、価値の高い1冊と言える。