内容
【読者対象】
大学初年次の学生、または高校/高専の上級生。理系・文系問わず。
【著者からのメッセージ】
数学は、イマジネーション(=想像力)の学問です。…と聞くと、驚くでしょうか?
僕は、数学を学ぶ際に一番大切なのは、頭の中にイメージを描くことだと思っています。特に、なにか初めて見聞きする物事を学ぶ際は、それがおよそどんなものなのか、イメージを持つことが大切です。
たとえば、初めて分数を学ぶ際には、「まるいケーキを5人で分けると…」というような例え話から始めるでしょう。実際にケーキの絵を描いて、それを5等分する様子を見せれば、ゴブンノイチ(=1/5)という分数のイメージが伝わります。
もし初めて分数を学ぶときに、横棒の上下に1と5という数字を書き込んで、「これが分数だよ」とだけ説明されたとしたら…。たちまち分数が嫌いになるかもしれません。
大学で学ぶ数学も、うえと全く同じことが言えます。どんなに難しい概念が現れたとしても、それに対するイメージを頭に描くことができれば、ある程度までは理解できるはずです。しかし大学で数学を学ぶ場では、こういう「おおざっぱなイメージ」があまり重視されません。ついつい、定義→定理→証明→練習問題という無味乾燥なサイクルを、ただ淡々と繰り返すスタイルに陥りがちです。そうした著者の経験と反省から、今回この本を執筆しました。
【本書の特徴】
本書は、イメージを大切にした、微積分学のテキストです。
読者のみなさんが、読んだ物事を頭の中でイメージしやすいよう、親しみのあるイラストやグラフを多用しました。また、大学初年次の読者が疑問を抱きやすい題材についても、かなり細かく説明してあります。たとえば、
・無限大∞とはなにか? (§1.2)
・対数は何のためにあるのか? (§2.2)
・なぜ微分の逆操作で面積が求まるのか? (§9.3)
など、他の類書ではスッと通り過ぎてしまいがちな題材も、豊富な例とイラストを用いて詳細に説明してあります。
難易度としては、高校で習得する数学3(数III)から少しだけ背伸びした、いわば「数学3.5」に相当するテキストとなっています。微積分学とはどういう学問なのか、その大まかなイメージを本書によって掴めた読者は、より程度の高い他の良書にぜひ挑戦してください。イメージを持つ前と後では、理解の進め方が全然違うことに気づくはずです。
本書のところどころには、コーヒーブレイク(=コラム)という見出しで、様々な学問にまつわる豆知識を載せてあります。数学に関するトリビアを含め、生物学・化学・文学など、多彩な分野の豆知識を詰め込みました。本書の本題である微積分学とは別の観点で、読者の興味に沿う話題があれば、うれしく思います。