内容
【書籍の特長】
本書の特徴は電気電子工学で使える数学を目指し、数学を解く手法の説明に重点を置き、電気電子工学の関係を示すための実験を掲載したことです。
目に見えない電気電子の動きを可視化し、理解・解析する手法の1つが電気数学です。従って、電気数学では公式の導出や理論より使えること、すなわち問題を解けることが最重要です。そこで、解くための要点を「解き方」としてまとめ、その使い方を例題で丁寧に説明しました。
学んだことが使える・役立つと分かれば、学習意欲は自ずと高まります。そこで、章の終りには、電気数学の活用する実験を示しました。とくに、電気電子工学は好きだけ数学には興味が持てないという学生には、電気数学を学習する大きなモチベーションになるハズです。
【各章について】
1章と2章では、行列を取り上げます。1章で2行2列、2章で3行3列以上と2章分を使って習得するよう構成しました。3章は三角関数で、交流波形を三角関数で記述する方法の習得を目指します。4章は指数・対数関数で、ネイピアン数eに関する指数・対数関数と、電気電子工学で重要な時定数について学びます。5章の複素数では、交流回路の記述に使われる複素数を取りあげ、交流をベクトル表示するフェーザについても学びます。6章は微分・偏微分です。各種関数の微分と微分の計算で重要な公式を修得し、多変数の微分である偏微分を学びます。7章は積分です。微分前の関数を求める不定積分と、関数の合計値を求める敵積分について学びます。8章と9章では微分方程式の解法で、8章で1階、9章で2階の微分方程式について学びます。10章と11章はラプラス変換です。ラプラス変換は、電気電子工学科では重要な数学手法なので、2章分をかけて丁寧に説明しています。12章はフーリエ級数です。方形波のフーリエ変換を通して、フーリエ級数の求め方を理解できるように構成しました。13章はベクトルです。ベクトルの内積・外積、さらには勾配、発散、回転までを説明しています。
【読者対象】
電気電子工学を学ぶ学生、特に大学1, 2年に設定される電気数学のテキストとしての使用を想定しています。同時に大学の3, 4年次生で電気電子の専門科目を学んでいる学生、大学院や企業ですでに研究・開発を行っている研究者・技術者が数学で困った時に容易に自主学習できるよう構成してあります。
【著者からのメッセージ】
著者(髙木)は数学が得意ではなく、大学の時に電気数学を修得するのにとても苦労しました。教える立場になってからは、定理の意味や解き方についてじっくり考えました。この過程で、学生が公式の理解や解き方で苦しむところが把握できました。そうした躓きどころの解決方法をふんだんに盛り込んだことが、他のテキストとの決定的な違いです。まずは実験のページからページをめくってもらい、少しでも数学に興味が湧けばと思います。
本書を通して、1人でも多くの学生が電気数学を習得し、電気電子工学部分野で活躍することを切に願います。