内容
医療における「予防」「診断」「治療」、さらに日常的な健康の維持に対して、現代科学技術は大きな役割を担っている。天然・生体高分子は、昔から衣服や日用品の素材として用いられてきた。 20世紀半ばからは、石油から作られる合成高分子が新たな産業となり、人工臓器をはじめとする様々な医療機器としても使われ、「医用高分子」として発展した。
一方、20世紀後半からの生命科学の進歩はバイオテクノロジーを生み、精密に生体高分子を合成できる技術をもたらして新しいバイオ医薬品産業を生み出してきた。さらに、生物を使うことなく試験管の中だけで生体高分子を合成し、新しい機能を生み出すこともできるようになった。このような技術と、試験管内で物質を扱う化学技術とが融合することで、ケミカル・バイオテクノロジーとよぶべき新しい分野が生まれている。
本書では、「高分子」を軸に、歴史的背景も含めて、バイオテクノロジーによる生体高分子や、化学技術による合成高分子について、基礎から最新の情報までの要点を解説した。中半では、それらの融合技術をまとめ、後半では最新の医薬品、医療機器について臨床応用されているものを中心に高分子の役割を解説した。また、世界に多大な影響を及ぼしているコロナ禍対策のための技術は、本書内容とも非常に密接に関連するため、コラムとして掲載している。