内容
【読者対象】
コンピュータグラフィックス(CG)技術に興味あるすべての学部学生。CGクリエイターを志す方で,CGの原理まで踏み込んで理解しておきたい方。
【書籍の特徴】
CG技術は多数の書籍やWebの記事などで解説されている。これに対して本書は,もっとも基礎的な技術群に対象を絞った。このような技術群は,前述の多くの解説を理解するための大前提となるにもかかわらず意外に説明されていない。本書はその部分に焦点を合わせた。特に汎用性の高い技術はできる限り深掘りしてていねいに説明し,読者の根本からの理解を促している。何らかの形でCGに関わる技術者や制作者にとって有用かつ常識的な基礎技術の原理を網羅した内容である。結果的に,CG技術の根底にあるアイディアの面白さを楽しむこともできる技術書となっている。本書の内容の多くは簡単に実行可能なデモプログラムをソースコード付きで用意している。読者は実際に実行結果を見て基礎技術の理解を深めることができる。
【各章について】
1 章ではコンピュータ処理の流れに沿ったCG 技術の全体像を示し,画像や色や図形という,CG において重要な情報のディジタルデータによる表現や表記について説明する。
2 章は図形をどのようにディジタル画像として表示するかがテーマである。古典物理学で言えば原子や分子に相当する構成単位である線分,三角形が画面上に展開される過程(アルゴリズム)を詳細に学ぶ。
3 章は物体データとしての図形を思い通りに操作するための数学的な道具である座標変換(幾何学的変換)を説明する。図形の配置のみならず,3 次元の物体データを2 次元の画面に図形として投影する手段も座標変換である。加えて画像に対する幾何学的変換も解説する。
4 章は3 次元物体データすなわち形状モデルをCG で扱うためのデータ表現を説明する。曲線理論の入門編もこの章に含まれ,曲面についても少し触れる。そのほかいくつかの特徴ある物体表現法については概要を紹介する。
5 章では,アニメーションやゲーム画面のような動きを伴うCG の表示技術にまつわる基本知識を述べる。そもそも画面が動いて見えるように制御する仕組みであるフレーム処理技術,および活用頻度の高い動き処理技術をやや詳しく説明し,各種アニメーション技法については概要説明にとどめる。
【著者からのメッセージ】
ほかのIT分野と同様に,CG技術は日進月歩です。本書はCG分野の多くの先進的な技術や高度な技術については思い切って割愛し,年月を経ても変わることのない原理的な技術に焦点を絞りました。そのため,10年後,20年後に読み返しても役に立つ書籍になったと自負しています。大学での講義の教科書として,あるいは長く使える参考書として利用してください。さらに,高校の情報の授業でディジタル画像やCGに興味を持った理科系の生徒たちにも読んでもらえれば幸いです。