内容
【本書の特徴】
本書は,電源やモータ(いわゆる強電)関係に使用されている圧粉磁心とボンド磁石の基礎から応用までを記述している。本書のレベルは,大学工学部4年生程度の材料科学の知識を学んでいることを想定している。ただし,重要な部分はできるだけ本書だけで理解できるように記載している。
内容としては,圧粉磁心とボンド磁石の具体的なプロセスや,それらの材料特性に関する情報が主体である。実用例に関しては,自動車関連が多い内容となっている。あまり詳細な磁性理論などには立ち入らないようにした。また,最近,軟質磁性材料に関する教科書がほとんど発行されていないので,軟質磁性材料の説明を多めにしている。なお,磁気センサ,電磁波吸収体や磁気記録などは本書では取り扱っていない。
【各章について】
1~4章は,電磁気,磁性材料および磁気応用の基礎を説明している。これから磁性材料に携わる方や,別の材料分野から磁性材料に変わる方でも,本書のみで概要が理解できるようにした。5~7章は,圧粉磁心やボンド磁石の具体的なプロセスや特性,さらにその実用化例を説明した。
1章:電磁気学や磁性材料の歴史概要を示す。
2章:電磁気学と磁性材料の基礎を説明する。磁性の基礎理論についても少し触れている。磁性を理解するには,量子力学が必須であるため,この点についても簡単に説明した。
3章:実用化されている強電関係の磁性材料について説明する。また,磁性材料に関係する評価技術についても記述した。
4章:モータ,電磁弁,変圧装置など,磁性材料を利用した応用機器の基本動作を説明する。本書の読者は,材料の開発者・研究者と想定しているので,そのような方に役立つ内容とした。したがって,磁気応用部品の動作に関係する詳細な理論計算などは省いた。
5章:磁性複合材料の考え方を説明する。圧粉磁心やボンド磁石は,特殊な効果を利用したハイスペックな材料ではなく,複合化で今までなかった領域を実現した材料であることを記述する。材料の実用化には,単なる「高性能」ではなく,「必要な特性」が重要であることを示す。
6章:報告および実用化されている圧粉磁心やボンド磁石の具体的なプロセスや特性について説明する。これらの材料は実用化されているものの,その特性は期待されたものに対してまだ不十分であること,不明な点も多いことを示す。この分野に参入する若手研究者のブレークスルーに期待したい。
7章:情報が公開されている圧粉磁心やボンド磁石の具体的な実用化例を説明する。読者に役立つよう,材料特性などの詳細な情報が公開されている例に限定している。なお,筆者の所属の関係で,自動車応用が多くなっている。
【著者からのメッセージ】
本書の内容で,圧粉磁心やボンド磁石の基礎から応用まで理解できるものと期待している。本書により磁性材料分野に参入した若手研究者が,磁性材料研究でブレークスルーを起こすことや,ネオジム磁石のような新材料を発明することを願っている。