内容
海洋生物由来の天然有機化合物の研究が活発に行われている。海洋生物は、塩濃度の高い海水中に棲んでおり、深海などの一部の場所は陸上にはない高温、高圧などの過酷な環境にある。また、陸上生物と異なり、海洋生物には動けない、あるいは著しく動きが遅いものが存在する。これらの生物が、食餌を確保し、敵から身を守り、パートナーを見つけて繁殖するためには、陸上生物とは異なった方法が必要になるはずである。化学という観点での解答としては、海洋生物独自の海洋天然物の存在が重要であると考えられる。
本書では、海洋天然物の中から、化学構造、生物活性、食品化学、天然毒などの観点から特徴ある化合物を紹介する。天然に存在する有機化合物の構造と生物活性の一端に触れ、興味を持ち、生命現象を解明しようとする学問領域にかかわってみようと思われることを願っている。