内容
本書は,測度論,すなわち,現代の確率論の観点から,数理統計学の歴史的背景にも言及し数理統計学への入門とその基礎に対する理解を深めることをねらいとしている.本書の想定読者層は,測度論に基づく数理統計学を理解することを目的とする大学生,主に理学系大学生1, 2回生である.
本書は,2部構成:第Ⅰ部確率及び第Ⅱ部統計より成り,3 semestersの講義を想定し構成されている.第Ⅰ部では測度論に基づく確率論への入門とその基礎として,第1章では可測空間及び確率空間を,そしてこれらを基礎とし,第2章では確率変数を,第3章では確率分布を講じる.第Ⅰ部は,第Ⅱ部統計への布石でもある.第Ⅱ部では統計的推測(推測統計)への入門とその基礎として,第4章では,それへの入門として,点推定,区間推定,そして仮説検定を概説する.統計的推測(推測統計)の基礎として,第5章では点推定,特に,最尤法やFisher情報量,そして統計的推測における美しい結果のひとつとして知られているCramer-Raoによる情報不等式を講じる.第6章では区間推定,そして第7章では,正規分布及び離散型確率分布,特に,2項分布の下での仮説検定を講じる.なお,第Ⅱ部では,代表的な推定及び検定問題を焦点とし,概念や理論的背景に対する理解を重視している.第9章では,前章までの補遺として,定理等の証明において引用した集合論への入門,第3章に引き続く確率分布,そして尤度比検定を講じている.
本書をとおして,確率は,事象の長さ,面積,及び体積を抽象化した測度ゆえ,それに測度が強調されるとき,確率は確率測度として引用され,そして測度論及び数理統計学に関する概念等の解題,そしてそれらの分野において先駆けとなった,または貢献した人物の歴史的背景が言及されている.これらは本書のuniqueな点でもある.