内容
冬の夜にまたたく星よ光年の昔に死にて非在の星よ
非在の星は、死してなおその輝きをとどめ、人々を見守っている。混沌とする世界にあって、人はどうしようもなく無力である。しかし、たとえ広大な宇宙の片隅で生きているちっぽけな存在であったとしても、残したい言葉がある。伝えたい言葉がある。いま歌わねばならないという強い思いがある。(本書「帯文」より)
【5首選】
夜の川満々としてさかのぼる黒きうねりを権力と呼ぶ
白雲を浮かべたるまま青空は暮れて紺青やがて深藍
ウクライナ侵攻のあさ香りよきロシアンティーを飲みしか彼は
「いいね!」なんて言ってるうちに足元がずぶずぶ沈む春泥の候
あかあかと日の照るさびしさわたくしに誰も救えぬ手が二本ある
装幀:倉本修