内容
Daniels(1954)は、標本平均の密度関数および分布関数の近似に鞍点近似法を用いて、非常に高い精度で近似値が得られることを示し、統計学への鞍点近似法の有用性を切り開いた。その後、英国とデンマークの人々によって研究が発展していった。多変量正規母集団に基づく多変量解析の分布理論では、Zonal多項式を用いた超幾何関数によって各種統計量の積率や検定力関数が表示できるようになった。しかし、Zonal多項式の複雑さと級数和の収束が遅いことにより、数値計算が困難であった。そのようななか、Butler等(2002)による超幾何関数のLaplace近似という「ブレーク・スルー」により容易に数値計算ができるようになった。本書は、鞍点近似法とLaplace近似法の適応による多変量解析の分布理論の発展をまとめたものである。