薬学生のための病態検査学 改訂第4版
内容
目次
【改訂第4版の序文】 2009 年に初版が刊行され15 年目を迎え,今回の改訂第4 版となった.本書は,薬学生向けの臨床検査学の教科書として,常に最新の情報を網羅し収集し,編集を行ってきた.また,本書の読者である薬学生や本書を採用していただいている教員からの意見に耳を傾け,改訂を重ねることで,この領域での先頭を走っていると自負している.本書を愛読していただいている読者に心から感謝申し上げる. 今回の改訂点を以下に示す. 1)検査項目の追加や基準値の変更:前回の改訂(2018 年)以降に新たに保険収載された項目や,急速に進歩する検査測定法の変更・追加,それに伴う基準値の変更を行ったほか,各診療ガイドラインも最新版を使用し掲載した. 2)構成の変更:薬剤師が活躍する医療現場を意識し,実務実習などでもすぐに役立つように,改訂第3 版までは付録として位置づけられていた「検査値一覧」を本書の先頭に配置し,さらに「検査法解説」を検査値一覧の次に配置する斬新な構成とした. 3)薬学モデル・コア・カリキュラム対応:薬学教育に必要とされる,臨床検査に関する知識や理解を詳しく整理できるように編集した.2024 年度から適用の改訂コア・カリキュラムにも対応し,「考える」過程を重視して,第4 章の症例の解説などは電子版のみに収載した. 4)知識の整理と定着:改訂第3 版で設けた「病態検査に関する演習問題」に加えて,第2 章の各節末ごとに重要ポイントに絞った復習問題(CBTレベル)を設け,知識の定着を促すようにした. 病気の診断に用いる情報は,問診や身体診察に加えて,さまざまな画像診断や血液・尿などの検体を使用した臨床検査診断などがある.これらを統合することにより,患者の病態を理解することが必要である.従来の医療では,患者の病態を読み解くことは医師の仕事であり,薬剤師などのメディカルスタッフの関与は少なかった.しかし,現在の医療では,薬剤師が患者に近い臨床現場で積極的に活躍するようになった. また,健康サポート薬局のような「かかりつけ薬剤師」は,未病も含めた健康管理への貢献も期待されている.薬剤師には,患者が持参する臨床検査値から得られる数値を解釈し,判断することが求められている.そのため,薬学生には,患者のさまざまな病態を正しく理解し,適切な服薬指導を行う能力が求められており,患者の病態を臨床検査値より読み解くことは,これからの薬学教育の根幹を占めている. おわりに執筆者の各位に感謝するとともに,出版にご尽力いただいた南江堂の諸氏に謝意を申し上げる. 2023 年10 月 三浦雅一 【初版の序文】 現在はチーム医療の時代とよくいわれている.チーム医療においては,より専門性の高い知識が有機的に融合しないことには真のチーム医療の成立は難しい状況である.チーム医療のスタッフはそのスタッフのもつ専門領域の知識が他領域にいかに関与・関連するかを的確に把握する必要があり,これらのチーム医療スタッフの密接な連携により,より高い水準の医療を社会に提供することが可能となる.特に,コメディカルスタッフに対する期待は大きいものがあり,薬剤師もその例外ではない.今,薬剤師業務が大きく変革されつつあり,これに伴って薬剤師に対して多くの,しかも質の高い知識と技能が強く求められてきている. 医薬品の合理的かつ適正な使用には,医薬品に対する高度な知識が不可欠であるが,このためには的確な病態の把握が前提となっている.有効性と安全性に優れた薬物治療には,臨床検査値のもつ意義を正しく理解し,これを医薬品の投与に的確に反映させる必要がある. 一方,臨床検査の近年の進歩には目を見張るものが多く,予防・診療・治療においてその重要性は日増しに大きくなっていることは衆人の認めるところであろう.また,最近の臨床検査の特徴として,①検査項目の増加,②測定技術の進歩・自動化,などがある.もちろん,これらは日々進化し続けているが,最新の検査情報だけでなく,検査室に届くさまざまな検体を処理するなかでも必要とされている配慮,診療ガイドラインの基本となっている測定法やその検査に関する基準値なども各診療科領域では必要不可欠なものとなっている.正確な検査には,患者の体から正しく検体が採取され,正しく解析されることが必要であるためである. 医療で最も身近なものでありながら本当のところよくわからなかった臨床検査について,薬剤師教育に必要な病態検査という観点で本書を編集した.執筆に関しては,可能な限り図や表を沢山盛り込み理解しやすいようにし,通常の授業だけではなく卒業後も利用できるような内容とするためより実践的で最新の臨床検査情報を盛り込むことを基本とした. 本書が,これから医療・健康界を背負っていく薬学部学生,薬剤師などのコメディカルスタッフの教科書や参考書として役立つことができれば,編者,執筆者一同にとって,これに過ぎる喜びはない. おわりに執筆者の各位に感謝するとともに,出版にご尽力頂いた南江堂の諸氏に深く御礼申し上げる. 2009 年6 月 三浦 雅一 【目次】 第1章 病態検査を理解する上での基礎と検査データの見方 A 病態検査を行うための分析原理と方法 B 検査データの見方 C 検査に用いる検体の種類 D 検体の取扱い,注意点,留意点 第2章 病態検査を行うにあたり必要な検査項目 A 血球検査 A-1 血球 A-2 凝固・線溶系 B 臨床化学検査 B-1 電解質 B-2 糖質・糖質代謝物 B-3 脂質・脂質代謝物 B-4 蛋白・蛋白代謝物 B-5 核酸代謝産物・ビリルビン B-6 酵素 B-7 骨代謝マーカー B-8 内分泌検査 C 免疫検査 C-1 免疫血清検査 C-2 自己免疫疾患検査 C-3 感染症 C-4 腫瘍マーカー D 遺伝子検査 D-1 遺伝子検査の分類 D-2 コンパニオン診断 E 微生物感染症検査 E-1 ヘリコバクター・ピロリ E-2 耐性菌 E-3 結核菌 E-4 病原体遺伝子検査 F 生理機能検査 F-1 心機能検査 F-2 肺機能検査 F-3 動脈血ガス分析 F-4 バイタルサインを含むフィジカルアセスメント G 一般検査 G-1 尿検査 G-2 便検査 第3章 主要疾患での病態検査の役割 A 心臓・血管疾患 A-1 不整脈 A-2 心不全 A-3 高血圧 A-4 虚血性心疾患 B 血液疾患 B-1 貧血 B-2 白血病と悪性リンパ腫 B-3 播種性血管内凝固症候群(DIC) C 消化器疾患 C-1 胃・十二指腸潰瘍 C-2 消化管の悪性腫瘍(胃がん,大腸がん) C-3 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病) D 肝臓・胆道・膵臓疾患 D-1 肝炎 D-2 肝硬変 D-3 肝がん D-4 胆石症 D-5 膵炎 D-6 膵がん E 腎臓・泌尿器疾患 E-1 腎不全 E-2 慢性腎臓病(CKD) E-3 ネフローゼ症候群 E-4 前立腺疾患 F 呼吸器疾患 F-1 気管支喘息 F-2 慢性閉塞性肺疾患(COPD) F-3 肺炎 F-4 肺結核 F-5 肺がん G 内分泌・栄養・代謝疾患 G-1 甲状腺機能異常症 G-2 クッシング症候群 G-3 尿崩症 G-4 糖尿病 G-5 脂質異常症 G-6 高尿酸血症・痛風 G-7 骨粗鬆症 H 脳・中枢神経疾患 H-1 脳血管障害 H-2 パーキンソン病 H-3 アルツハイマー病 H-4 髄膜炎・脳炎 I 免疫疾患 I-1 関節リウマチ I-2 アレルギー性疾患 I-3 膠原病および関連疾患 I-4 後天性免疫不全症候群(AIDS) 第4章 病態検査の意義をみる症例 がん 脳血管障害 糖尿病 精神神経疾患 心疾患 免疫・アレルギー性疾患 高血圧症 感染症 第5章 病態検査に関する演習問題 演習問題 解答・解説 略語一覧 検査値一覧 参考文献 索引
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