内容
グラフ理論における木と微分方程式の離散数値解法――この意外な結びつきを数学的に解きほぐすのが本書のねらいである.それは,常微分方程式の初期値問題と,この問題の近似解に関する解析を,微分方程式を定める函数に関する解析的部分と,係数列に関する代数的部分とに分かつことができ,後者にはグラフ理論における木による解析がきわめて有用であることに由来する.
本書は1970年代に創始され,発展してきたB級数理論を,その創始者がみずから解説し,現代における応用まで著述した原著の日本語訳である.B級数の解析には,群論その他の代数的構造の理論が適用され,これまでよく知られたRunge--Kutta法の解析に優雅さと秩序がもたらされた.この理論はさらに,幾何学的数値積分法や理論物理学への応用を展望するであろう.