内容
南北朝の戦いに敗れた熊野衆は、源氏の末裔・千鶴御曹司(アギ・バートル)を旗頭にいまだ南朝方が優勢な九州での再起を図る。
熊野で舟指(船頭)をしていたカラスは、その類まれな船捌きを買われ、次第に千鶴の片腕となっていく。
しかし、九州探題となった足利幕府方・今川了俊によって旧南朝方は大宰府を奪取され、熊野衆は対馬に後退する。
もはや安住の地はないのか。新たな天地は海を渡るしかない。
外洋航海術、大型船(ジャンク船)の建造、琉球との交渉など数々の困難を乗り越え、ついに彼らは朝鮮半島の地へ――。
日本史において、中世に悪名を轟かせた「倭寇」。
北九州から朝鮮半島を根城に、日本人そして高麗人などから構成され、海賊行為を行った者たちとしてのイメージが強い。
そうした悪事を働く集団がいる一方で、朝鮮の人々から同じ呼び名の「倭寇」と蔑まれ、恐れられた集団がいる。
その主将の名は「アギ・バートル」。
『高麗史日本伝』に名が残るのみの伝説の人物を中山義秀文学賞の作家が、独自の歴史考察と想像力で描き出す傑作!
日ノ本では故郷を追われ、「海賊」と蔑まれた男たちの、誇りをかけた起死回生をかけた物語