内容
【著者からのメッセージ】
機械力学(振動工学)など工業数学の問題を解くには,解析的な方法と数値的な方法があります。ただし,実際的な問題は解析的には解けず,数値的に解かれることが多いです。従来コンピュータを使って問題を解く場合も数値的に解が求められることが一般的でした。身近な例としては,Excelを使った計算などは数値的な方法となります。一方,昨今ではコンピュータでも解析的に数式を取り扱えるようになってきており,例えば、ax2+bx+c=0 のような数式を文字変数を含めたまま解くことができます。つまり,ある変数に値を代入し,残りの変数は未知変数としてその解を求めることができます。本書で紹介するPythonでは,この解析的な計算と従来の数値的な計算の両方をすることができます。もちろんこれらはMathematicaやMATLABなどのソフトウェアでもできますが,無料という点でPythonが多くの方に歓迎されているようです。
板書で秩序立てて数式や数値を交えながら説明する理系の授業などでは,Pythonを利用すれば数式の計算に悩まされることよりも,図表を用いたもっと上流側の物理的考察や力学的解釈に注力でき,教育効率を各段に向上させることが期待されます。また,Excelを駆使しているような職場でも,複素数や変数を交えての計算なども簡単に扱える本ソフトウェアの導入は,仕事の仕方を変貌させる可能性があります。超優秀な数学担当秘書を採用したに等しい高レベルの仕事手法の獲得に感激するでしょう。著者らは,そのような活用を期待して本書を執筆しました。
紙面の制約で本書では中途となったプログラムが多々あり,(詳細はWEB)のサインが入っています。コロナ社のWebページからプログラムの全文をダウンロードできるので,是非活用して下さい。
【各章の説明】
第1章 Python 事始め:Python のダウンロードおよびインストール方法の手引き。
第2章 Python 速習十講:簡単な電卓計算から始め,表計算,グラフの描画,ファイルの出し入れなど、実践に飛び出す準備です。
第3章 PAD によるプログラミング技法:フローチャートに似たソフトウェア設計図であるPAD(Problem Analysis Diagram)を紹介。論理思考過程を視覚化、図面に基づくソフト生産の大切さは時間の経過とともに感得されるでしょう。
第4章 Pythonで解く工業数学:厳選した4テーマ「微分方程式」「ラプラス変換」「フーリエ変換」「固有値問題」について,大学で学ぶ工業数学を例題中心に学ぶ。鉛筆に代えて,ソフトウェアで数学を処理する威力を体感してほしい。
第5章 機械力学:機械・電気系ダイナミクスの基本として,機械力学(振動工学)の問題を解く。
第6章 制御工学:機械・電気系ダイナミクスの基本として,制御工学の問題を解く。
第7章 私設関数:著者らが仕事や教育で使っている重宝な私設関数を紹介する。多いに活用されたい。