著者紹介
林 奕含(著者):1991年3月16日~2017年4月27日台湾・台南で名の知られた皮膚科医の娘として生まれ、幼少期から作文や数学で優秀な成績を収め、多くの表彰を受ける。高校2年のときにうつ病を患う。2009年、台北医学大学医学部に入学するが、2週間で休学。その後、3度の自殺未遂。2012年に国立政治大学文学部中国文学科に入学、3年生のときに再び休学。2017年2月に、デビュー作であり唯一の著作である本書を出版。その2か月後に自殺。「これは実話をもとにした小説である」と本書に記していることから、台湾社会に大きな波紋を呼んだ。17年、Openbook好書賞(台湾)、18年、第1回梁羽生文学賞大賞(中国、広西省)を受賞。中国語簡体字、韓国語、タイ語、ロシア語、ポーランド語でも翻訳刊行され、200万部突破。24年に英語版、後にスペイン語、ベトナム語版が刊行予定。
泉 京鹿(翻訳):1971年、東京生まれ。フェリス女学院大学文学部日本文学科卒業。北京大学留学、博報堂北京事務所を経てライター、メディアコーディネーター、翻訳者として16年間北京で暮らす。主な訳書に、余華『兄弟 上・下』(文春文庫、アストラハウス)、閻連科『炸裂志』(河出書房新社)、王躍文『紫禁城の月――大清相国 清の宰相 陳廷敬 上・下』(共訳、メディア総合研究所)、九把刀『あの頃、君を追いかけた』(共訳、講談社文庫)など。大学非常勤講師。
内容
「記憶に傷がつくほどの衝撃を受けた」――綿矢りさ
「性暴力被害で自分を責めてしまう仕組みを理解できる本」――小川たまか
芸能界における未成年者への性虐待、学習塾や学校の教員など、権力者や教育者による子どもへの性虐待の報道が後を絶たない。本書に綴られているような出来事が次々と明るみになり、大人はどのように子どもを守っていけばいいのか、社会の構造的な問題について、様々なところで議論されている今こそ必読の書としてUブックス版で緊急出版する。
文学好きな房思琪(ファン・スーチー)と劉怡婷は、台湾・高雄の高級マンションに暮らす幼なじみ。美しい房思琪は、13歳のとき、下の階に住む憧れの妻子ある五十代の国語教師に作文を見てあげると誘われ、部屋に行くと強姦される。異常な愛を強いられる関係から抜け出せなくなった房思琪の心身はしだいに壊れていく……。房思琪が記した日記を見つけた劉怡婷は、5年に及ぶ愛と苦しみの日々の全貌を知り、ある決意をする。