内容
研修医・循環器内科シニアレベル必携のハンドブック,待望の改訂第5版.循環器内科の日常診療において,知っておかなければならない病態と疾患およびその対処法,検査手技,治療手技,各種薬剤までを白衣のポケットに入るコンパクトサイズにまとめている.今版では,進歩した心不全の薬物療法や弁膜症におけるインターベンション治療を中心に,最新情報へアップデートの上,さらにパワーアップした内容とした.
【改訂第5版 監修の序】
もう25年も前のことである.我々の診療科へrotateする研修医,循環器専門医を目指す専修医たちを指導する中で,彼らがマスターすべき循環器内科学の基本と実技のあり方をまとめたのが,このハンドブック第1版であった.
循環器内科学の進歩は目覚ましい.改訂を重ね,この新しい第5版となった.進歩と変革に対応して最新情報を集約し,第一線の若い医師たちの循環器診療に役立つハンドブックである.
言うまでもなく,循環の概念を初めて見出し記載したのは16~17世紀の英国の医師William Harvey(1578-1657)である.以来この数百年間にtry and error,paradigm shiftを重ねて,発明と発見が循環器病学を進歩発展させた.経験に基づく医療experience based medicineは,証拠に基づく医療evidence based medicine(EBM)(1977年)へ変貌し,今日ではEBMに基づくguideline(GL)が数多く報告されている.近い将来,生成AIなどが臨床の場に投入され診療支援するとも予測される.医師はEBM,GLを参照し,目の前の個々の患者に寄り添い医師自身の総合的な判断に基づいてtailor-madeの診療をすることとなる.
治療法の発展は著しい.たとえば治療薬,一連のNOAC,ivabradine,SGLT2阻害薬,ARNI,vericiguatなどの登場である.A Grüntzig(1939-1985)のPTCA発表(1977年)は,診断法であった心臓カテーテル法を治療の技術とした.冠動脈インターベンションばかりでなく,TAVI,PTMC,MitraClipⓇ,ステントグラフト,不整脈アブレーション,ICDなど多岐にわたる.
そこで診療の場では,これまで以上に的確な診断を求められる.循環器疾患の診断は,history taking,physical examination,そしてEKGに始まる画像診断法,その他の臨床検査による.そこで判断するのは,病因(etiologic),解剖学的異常(anatomic),病態生理学的異常(physiologic)の三点である.自覚症状の重症度(functional capacity),客観的評価(objective assessment)を含める.
確実な診断が合理的な治療選択を生む.診断と治療は常に一体である.
2024年3月 半田俊之介