著者紹介
青木淳一(著者):1977年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。エネルギー、情報通信、交通など公益事業の規制と競争を研究している。おもな著書に『判例から学ぶ憲法・行政法(第4版)』(共著、法学書院、2014年)、『行政法事典』(共著、法学書院、2013年)、『総合研究・日本のタクシー産業』(共著、慶應義塾大学出版会、2017年)がある。趣味は道の駅めぐり。
一ノ瀬大輔(著者):1982年生まれ。立教大学経済学部准教授。専門は環境経済学。経済学の視点から資源循環問題や環境法の効果について研究している。おもな著作に“On the relationship between the provision of waste management service and illegal dumping” (with M. Yamamoto), Resource and Energy Economics, 2011; ”Landfill Scarcity and the Cost of Waste Disposal”, Environmental and Resource Economics, 2024 がある。
小林宏充(著者):1971年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。空気や水などの流れの力学、なかでも乱流、プラズマ、燃焼、量子乱流、それらを利用したエネルギー変換について研究している。おもな著作に『流体力学の基礎』(共著、数理工学社、2014年)、“The subgrid-scale models based on coherent structures for rotating homogeneous turbulence and turbulent channel flow”, Physics of Fluids, 2005; “Imaging quantized vortex rings in superfluid helium to evaluate quantum dissipation”, Nature Communications, 2023(共著) がある。趣味は野球、スキー、筋トレ。
内容
循環型社会、生物多様性、気候変動と地球温暖化。
3つのテーマ、文理の双方から考える環境問題!
「本書を手に取ったみなさんは、どのような「環境問題」を思い浮かべるでしょうか。「環境」ということばそのものはニュートラルで、対象となるものの周囲を意味しますが、「環境問題」というときの「環境」は、人間を含む生物の周囲を指します。そして、人間の活動が影響を与えている、あるいは、人間の活動に影響を及ぼしている自然や社会の変化が、見過ごすことのできない状況に至ると、それが「環境問題」として人びとに認識されるようになるのです。
本書は、20世紀終盤から問題がより顕著にあらわれはじめて、現在も継続している環境問題である、「循環型社会」、「生物多様性」、「気候変動と温暖化対策」をテーマとして、それぞれを法学、経済学、自然科学の観点から解説しています。
なぜ、法学、経済学、そして、自然科学なのか。
現代国家は、法律というツールによって社会を運営します。社会の構成員である個人や企業の行動を決定づける大きな要因には、経済的動機があります。社会的にも経済的にも合理性のある政策が行われるべきですが、その政策は自然科学の知見にも裏打ちされたものであるべきです。
科学的に実現可能なことであっても、倫理的に許されず、法律が規制することもあるでしょう。他方で、法律の目標が科学的に達成不能であれば、意味がありません。ある問題に対して有効な科学的対策があっても、採算に見合わないことは実現困難でしょう。しかし、経済性が乏しいからといって、科学的解明をあきらめるわけにはいかないのです。
本書の読みかたは、みなさんの自由です。どこから読んでもよいし、どのような順番で読んでもよい。「循環型社会」、「生物多様性」、「気候変動と温暖化対策」のうち興味・関心のあるテーマから、あるいは、法学、経済学、自然科学のうち取り組みやすい学問分野から、読んでみてください。ところで、各章・各節の間で、内容の重複があるように見えるかもしれません。本書はあえて調整しませんでした。執筆者は、それぞれの専門分野に立って解説しています。同じテーマであっても、それぞれの専門分野から考えると、どのような説明がされるのか――本書を読むときの楽しみのひとつにしていただきたいと思います。」(本書「はしがき」から)