内容
―圏を関係付き箙(クイバー)で表示する方法によって、小さな圏を手作りし、圏のなかで起こっていることを可視化する―
本書では、圏を関係付き箙(クイバー、有向グラフ)で表示し、その集合表現(前余層)とその間の射を図示する手法を用いて、圏論における様々な概念を視覚的に捉える例を作る。本書で目指しているのは、それにより、圏論を理解しやすくすることである。
本書を読むための予備知識としては、集合と写像、集合の上の同値関係と類別の程度を想定している。
圏だけではなく、関手(集合表現)や自然変換をも、箙表現の構造箙を用いて視覚的に取り扱う方法を紹介している点は、本書の大きな特徴である。これによって、特に極限や余極限の理解は劇的に容易になり、豊富な例を作ることができるようになる。本書の後半で解説している随伴関手は、その最初の練習教材として用いることができる。随伴関手については、自然同型を表す竹内外史の著書『層・圏・トポス』で用いられている、多段の式表示をフルに使い、随伴関手の動きを可視化して証明を見やすくしている。また、右随伴を包絡、左随伴を被覆として捉える見方を取り入れている。
圏論の初歩から解説を始め、一般随伴関手定理、各点Kan拡張定理まで解説している点も本書の特色の一つである。さらに、集合論については、固定したグロタンディーク宇宙を基準とする、Levyによる集合の階層を用いて圏に適度を定義し、集合論の範囲内で圏の拡大を扱える枠組みを採用している。