内容
欲望、堕落、幻想を見極めようとする力作──オブザーバー紙
めくるめく緊迫感が最後までゆるまない筆致──デイリーテレグラフ紙
植民地支配の歴史を生きた者たちの、人種と性をめぐる抑圧と懊悩を、
ノーベル賞作家が鮮烈に描いた、濃密な、狂気の物語。
語りと思考のリズムを生かした新訳決定版!!!
「父さん、許して、そんなつもりじゃなかった、
愛してる、だからやったの」
20世紀初頭の南アフリカ。異人種間の結婚や性交が禁じられていた時代。白人と褐色の肌の人々が生きる隔絶された空間で事態は推移する。石と太陽で造られた屋敷の仄暗い廊下では、昼も夜も時計が時を刻む。孤独で不美人な未婚の娘マグダ、農場を支配する厳格な父、使用人ヘンドリックと美しく幼い花嫁、不在の兄。肩の上に一気に手斧が振りあげられ、ライフル銃の薬莢が足元で音を立てる。やがて屋敷の秩序は失われ、暴力と欲望が結びつく……。ノーベル賞作家が、検閲の網をかいくぐり、植民地社会の歴史と制度への批判をこめて織りあげた幻視的長篇。新訳決定版!!!