内容
原著者のWilfried Brutsaert(ウィルフリード・ブルッツァールト)教授は、2022年には「水のノーベル賞」とも称されるストックホルム水大賞(Stockholm Water Prize)を受賞している、水文学分野の重鎮である。
本書は、コーネル大学における長年の講義の資料を基にして書かれた、自然界の水の分布および移動に関する様々な概念とそれらの相互作用を論理的に解説した、水文学のテキストの改訂版の邦訳である。初版同様、大気中、地表面、地下、それぞれにわたる水循環について、一貫した論理の流れ、同一の提示の方法に従ってわかりやすい記述がなされている。それに加えて、初版刊行からの十数年における新たな知見、例えば気候変化に対する地球規模水循環の応答、地表面熱収支のクロージャー問題、融雪、地下水貯留量変化や乱された大気境界層を伴う地表面の統計的変動性などを盛り込んだ内容となっている。
また、水文学とその周辺分野とのつながりも記述されているため、関連する分野の研究者や技術者にとっても利用しやすい書籍となっている。水文学を志す学生や水文学の研究者のみならず、環境科学、気象学、農学、地質学、気候学、海洋学、雪氷学や他の地球科学分野の研究者や技術者にとっても、大変有益な書となるだろう。
[原著: Hydrology: An Introduction, 2nd Edition, Cambridge University Press, 2023]