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略奪される企業価値~「株主価値最大化」がイノベーションを衰退させる~
ウィリアム・ラゾニック,
ヤン-ソプ・シン
著
鈴木 正徳
翻訳
中野 剛志
他
発行年月 |
2024年10月 |
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言語 |
日本語 |
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媒体 |
冊子 |
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ページ数/巻数 |
350p |
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大きさ |
19cm |
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ジャンル |
和書/社会科学/経済学/経済学説・経済思想 |
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ISBN |
9784492444832 |
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商品コード |
1039062815 |
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NDC分類 |
335 |
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本の性格 |
実務向け |
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新刊案内掲載月 |
2024年10月4週 |
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書評掲載誌 |
日本経済新聞 2024/11/16 |
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商品URL
| https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1039062815 |
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著者紹介
ウィリアム・ラゾニック(著者):ウィリアム・ラゾニック経済学者、マサチューセッツ大学ローウェル校経済学名誉教授経済学者、マサチューセッツ大学ローウェル校経済学名誉教授、産学研究ネットワーク会長。専門は、イノベーションの社会的条件、社会経済的な流動性、雇用機会、所得分配、先進国および新興国における経済発展。「革新的企業の理論」の提唱者として知られる。2010年のシュンペーター賞を受賞したSustainable Prosperity in the New Economy?: Business Organization and High-Tech Employment in the United States(2009年)等、著書多数。
ヤン-ソプ・シン(著者):ヤン-ソプ・シン(ヤンマイナスソプ シン)経済学者、シンガポール国立大学経済学部教授経済学者。シンガポール国立大学経済学部教授。専門は東アジアの経済成長、金融危機とリストラクチャリング、テクノロジーとイノベーション、競争戦略、企業組織。14年間ジャーナリストとして活動し、韓国の有力経済紙である毎日経済新聞社の論説委員等を歴任。1995年にケンブリッジ大学で博士号取得。2008年から09年まで、韓国企画財政部長官の非常勤経済顧問を務めた。著書に、The Global Financial Crisis and the Korean Economy(2013年)等がある。
鈴木 正徳(翻訳):鈴木 正徳(スズキ マサノリ)翻訳家1964年生まれ。1987年早稲田大学法学部卒業。第一勧業銀行など複数の金融系企業勤務を経て、翻訳家。主な訳書にL・ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』(東洋経済新報社)、同『ミンスキーと〈不安定性〉の経済学』(白水社)、ウィリアム・ミッチェル&トマス・ファシ『ポスト新自由主義と「国家」の再生』(白水社)がある。
中野 剛志(他):中野 剛志(ナカノ タケシ)評論家評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『国力論』(以文社)、『富国と強兵――地政経済学序説』(東洋経済新報社)、『変異する資本主義』(ダイヤモンド社)などがある。
内容
真犯人は「自社株買い」。
「企業が資金を調達する場所」ではなく、「企業から資金を吸い上げる場所」と化した株式市場。
持続不可能な「略奪的価値抽出」の仕組みが企業を滅ぼす。
シュンペーター賞・マッキンゼー賞を受賞した企業組織論の権威による明快かつ緻密な分析。
本書は、30年もの経済停滞に苦しむ日本の経済政策担当者たちや経営者たちにとっては、計り知れない重要性を持っている。なぜならば、彼らがずっと追い求め、そして得られなかった「革新的企業」の理論がここにあるからだ。特に、近年は、企業の株価は過去最高値を更新して上昇し、企業の利益も好調と言われているにもかかわらず、実質賃金は下落を続け、消費も低迷するという現象が起きている。なぜ、そのような現象が起きているのか。その答えを、本書の「革新的企業の理論」が明らかにしているのである。――中野剛志「日本語版解説」より
1980年代以降、「株主価値最大化」イデオロギーが企業や経営者の行動原理を支配するようになった。そのため、「価値抽出」の制度である株式市場を介して、「価値創造」制度である企業から「価値」を「略奪的に抽出」することが常態化した。この「略奪的価値抽出」の最たる例が「自社株買い」である。
このことが、企業のイノベーションを妨げ、雇用を不安定化させるなど、経済、政治、社会に様々な弊害をもたらしていると指摘。そのうえで、社会の持続的な繁栄を取り戻すべく、「株主価値最大化」イデオロギーに冒されたコーポレート・ガバナンスを全面的に改めるべきである、と論じる。
一般的に、株式市場は、企業が生産能力への投資を行うための資金を供給し、価値を創造する制度だと考えられている。これに対し本書では、株式市場は企業から価値を抽出する制度に成り果てている、と断言する。
本書のような指摘は、これまでもあったが、「革新的企業の理論」や、「内部留保と再投資」対「削減と分配」といったラゾニック独自の視点から明快かつ緻密な分析を加えているところが、本書の愛大の特徴であり、説得力を与えている。