内容
好評を博している日本版“ヘルニア診療のバイブル”を大幅に拡充した待望の改訂版.鼠径部ヘルニア・腹壁ヘルニアの病因,解剖,手術手技から合併症対策までを1,000点を超える写真・イラストとともに解説.内視鏡外科手術・ロボット支援手術を中心に新たな術式を盛り込み,再発・術後疼痛を防ぐための戦略も提示.初めて執刀する若手医師からエキスパートまで,すべての外科医必携の一冊.
【書評】
本書は,初版の発行から7年を経て,ヘルニア治療を取り巻く臨床・学術環境の変化に対応するべく全面的に改訂された専門書である.柵瀨信太郎先生と諏訪勝仁先生は,日本におけるヘルニア外科の第一人者であり,本書は両氏の深い知見と,分野の最前線に立つ執筆陣によって構成されている.ヘルニアの基礎から最先端の低侵襲手術までを網羅し,初学者から熟練の外科医まで,幅広い層にとって有用な一冊となっている.第2版の最大の特徴は,従来の開腹術に加えて,腹腔鏡手術,特にロボット支援手術を中心とした低侵襲の手術技術の進展をふまえた記述の充実である.最新手技の理論的背景から実践的コツまでが,術野写真や手技図をふんだんに用いて解説されている点は特筆に値する.また,周術期合併症の予防と管理,術後慢性疼痛への対処など,日常診療で直面する課題にも丁寧に向き合っており,外科医の実践力を高める内容となっている.加えて,各章においてエビデンスに基づく記述が徹底されており,術式の選択やメッシュの種類,固定法に関しても,国際ガイドラインや最新文献との整合性が図られている.
ヘルニア手術は外科医がはじめての執刀症例として経験する機会が多い手術手技である.しかし,組織の剝離,切開,縫合など手術の基本要素が濃縮されており,非常に複雑なヘルニア囊を取り巻く腹膜や筋膜,神経の解剖学的な造詣を深めなければ,術後合併症や再発のない完璧な治療を達成することは困難であり,外科医の知識や技量が不足していると大きな事故を招く可能性があることも事実である.本書は,日本の外科診療におけるヘルニア治療の質の向上と標準化に大きく貢献するものである. 柵瀨先生は本書を,絶版となった米国のヘルニアバイブル“Nyhus & Condon’s Hernia”を目標として,ヘルニア手術に携わるすべての外科医のために企画・制作されたと序文で述べているが,本書は初版の発行から7年の間に開発された新たな術式や刷新された分類,ガイドラインなどがすべて盛り込まれており,読者が本書を開いたときに,そこにはヘルニアに関して知りたかった最新情報が必ずみつかり実臨床に活かせる,まさに現代の「ヘルニアバイブル」となる必携の一冊である.
臨床雑誌外科87巻8号(2025年7月号)より転載
評者●渡邉 純(関西医科大学下部消化管外科 主任教授)