内容
統合失調症の生物学的本体は何か? この答えとして近年、海外ではノルアドレナリン説が注目され始めている。本書はこのノルアドレナリン説の我が国のパイオニアによる、平易な解説書である。ノルアドレナリン系の活動が過剰な場合、過覚醒と呼ばれ、軽度な場合、不眠、不安、過敏、対人恐怖などですむが、激しくなった場合、猜疑的、被害的となり、思路も滅裂となる。逆に低下すると鈍感になり、活動性も低下する。この軽、中程度の異常は様々な精神障害で見られるが、統合失調症の陽性症状、陰性症状はその最も激しい形といえる。本書では、こうした思想が、著者の臨床と脳科学の両面にわたる過去半世紀の研究史に沿って分かりやすく語られる。