著者紹介
ブルース・ホフマン(著者):(Bruce Hoffman)米外交問題評議会の対テロおよび国土安全保障担当シニアフェロー。ジョージタウン大学ウォルシュ外交政策学部教授、セント・アンドリューズ大学テロリズム研究センター名誉教授、米陸軍士官学校テロ対策センターのシニアフェロー。オックスフォード大学にて博士号取得。50年にわたってテロリズム研究を行なっている。主著Inside Terrorism (Columbia University Press, 1998) は10か国語に翻訳され、1998年に増補改訂第2版が、2017年に増補改訂第3版が刊行された(日本語版は『テロリズム――正義という名の邪悪な殺戮』原書房、1999年)。他の著書にAnonymous Soldiers: The Struggle for Israel, 1917–1947 (New York: Knopf, 2015 and New York: Vintage, 2016) などがある。*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
ジェイコブ・ウェア(著者):(Jacob Ware)米外交問題評議会のリサーチフェロー。ジョージタウン大学ウォルシュ外交政策学部とデサレス大学の非常勤講師。学術ジャーナルStudies in Conflict & Terrorism編集委員を務め、米陸軍士官学校現代戦研究所非正規線イニシアティブにも参加している。*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
田口未和(翻訳):(たぐち・みわ)上智大学外国語学部卒。新聞社勤務を経て翻訳業に就く。主な訳書にハーラン・ウルマン『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか』、ジョシュア・クネルマン『100%合法だが、健康によくない商品の売り方』(以上、中央公論新社)、ドナルド・P・ライアン『古代エジプトの日常生活』、ロバート・ガーランド『古代ギリシアの日常生活』(以上、原書房)、マイケル・フリーマン『デジタルフォトグラフィ』(ガイアブックス)ほか。*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
内容
2015年チャールストン、18年ピッツバーグ、19年パウウェイ、同年エルパソ――近年米国では極右による銃撃事件が多発している。さらに、大統領選挙結果を受け入れないトランプ支持者による2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃は、世界中に衝撃を与えた。しかしこれらは、決して新しい事象ではない。米国の極右テロリズムは1970年代後半にさかのぼる歴史があり、なかでも95年のオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件は168人もの犠牲者を出した。
こうした暴力は、過去の平穏を取り戻すという使命の下の結束と、反政府主義を特徴とする。彼らにとっての平穏とは、人間を人種、性別、宗教で分類し、キリスト教徒の白人男性が最高層を占める世界を指す。暴力を駆動するのは極右流の加速主義であり、憲法修正第2条の保障する銃所有権の死守は、至上命令である。決定的な銃規制の導入は、この場合何を意味するだろう。
約3億3000万の人口に対して個人所有の銃器が4億丁あると推計され、政治目的の暴力行使は「ある程度正当化される」と考える人が左右を問わず増加している。本書は極右テロリズム研究の第一人者と若手研究者との共著による、この分野の決定版であると同時に、危うい均衡の上に民主制が成立しているこの国を知るための、非常に有益な一冊ともなっている。