抗酸菌検査ガイド<2025>
内容
目次
【序文】 日本結核・非結核性抗酸菌症学会では,1950年の「 結核菌検査指針」 の刊行以降,新しい基準や方法に対応した検査指針のアップデートを続けている.2000年には「 新 結核菌検査指針」 が刊行され,2007年には「 結核菌検査指針2007」 に改訂されて,迅速検査体制の構築を念頭に置いた液体培養の推奨や,精度保証体制の強化のための記述の追加・改訂が行われた.さらに2016年には,非結核性抗酸菌症の検査にも一部対応した「 抗酸菌検査ガイド2016」 を上梓している.その後のアップデートに対応し,2020年には「 抗酸菌検査ガイド2020」 を上梓した.今回,その後の疾患および検査環境の変化に対応すべく「 抗酸菌検査ガイド2025」 への改訂にいたった. 既知の事実ではあるが,日本の結核は2023 年度には罹患率8.1/10 万人まで低下し,減少傾向が続いている.ただし社会的弱者や外国出生者など,いまだに相対的罹患数が多かったり,薬剤耐性率が高かったりする集団も一定数存在し,単純に罹患数の減少を喜べる状態ではない.一方で非結核性抗酸菌症は2017 年時点での検査データからの推定で19.2/10 万人と漸増している.しかしながら,単純にMycobacterium avium あるいはMycobacterium intracellulare 感染症が増加しているわけではなく,質量分析やゲノム解析の発達もあり,稀少菌種( 一部は新種) による稀少な感染病態が増加しているのが現状であろう.これらの抗酸菌感染症に関する病態の変化は,あらためて臨床力の強化を要請するはずであるが,対応には多大な労力と時間が必要と思われる.その間のギャップを埋めるのが抗酸菌検査の役割であり,世界的に抗酸菌検査は「 多様性」 に対応する方向に向かっている.たとえば,舌スワブや尿,便,バイオエアロゾルなどに代表される非喀痰検体への移行や,多様な抗酸菌を一度に定量的に検出可能な網羅解析,あるいは培養を使わない経過観察法などの方向性である.日本は残念ながらこれらの抗酸菌検査の分野で先端を走っているとはいえないが,せめて遅れをとらないようにとの思いで本改訂版を上梓する次第である. 本書の改訂にあたっては再び多くの多忙な先生方にご協力をいただいた.あらためて深甚なる感謝を申し上げたい.次の改訂は私の責任ではないと思うが,世界に互する抗酸菌検査システムへのアップデートが近日中に実現することを期待する. 2025年1月 一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 抗酸菌検査法検討委員会 委員長 御手洗 聡 【目次】 1章. 抗酸菌検査概要 2章. 用語の定義・略称 3章. 抗酸菌検査関連法規 4章. 抗酸菌検査のバイオセーフティ(検体収集~輸送~検査~保管~滅菌・廃棄) 5章. 検査材料 6章. 抗酸菌塗抹検査 7章. 抗酸菌分離培養 8章. 抗酸菌の同定 9章. 抗酸菌の遺伝子検査 10章. 抗酸菌の遺伝子型別解析 11章. 薬剤感受性試験 ① 結核菌 ② 非結核性抗酸菌 12章. 精度保証 索引
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