内容
日本臨床腫瘍学会編集による,医学部生を主対象とした臨床腫瘍学の入門書の改訂第4版.各項の冒頭には要旨がわかる「summary」,末尾には「この項のキーポイント」を掲載し,理解しやすい構成が特徴.腫瘍学における基礎医学から診断・治療の総論,疾患各論までを網羅し,医学部生に必要な知識をわかりやすくまとめた.今改訂では同学会のテキスト『新臨床腫瘍学』の改訂内容を反映し,最新の内容を解説した.
【改訂第4版 序文】 *抜粋・改編
『入門腫瘍内科学』は,医学部で卒前専門教育を受ける医学生のためのテキストとして,2009 年10 月に初版が刊行されました.そして今回,最新の医学的知見を反映した改訂第4 版をお届けする運びとなりました.
この間,がんの臨床医学は急速な進展を遂げてきました.分子標的治療,個別化治療,ゲノム医療,免疫チェックポイント阻害薬の進化に加え,ウイルス療法,CAR-T 細胞療法,抗体薬物複合体(ADC)療法,光免疫療法といった新たな治療法が登場し,臨床の現場での応用が広がっています.また,高齢者に特化した治療方針の確立や,小児・AYA 世代がん患者の長期フォローアップの重要性も,より強く認識されるようになりました.さらに,ロボット支援手術や粒子線治療などの先端的な外科療法および放射線療法の進歩,支持医療や緩和ケアの充実も大きな注目を集めています.さらには,COVID-19 パンデミックといった新たな課題も浮上しています.
これらの状況を踏まえ,改訂第4 版では各項目で増補改訂が行われました.新設項目として,「総論5-6- E.新規治療」「総論5-8.高齢者の治療」「総論5-12.小児・AYA 世代のフォローアップ」を加え,「総論5-9.がんサポーティブケア(支持医療)」に「Onco-Cardiology」や「妊孕性」を含めました.一方,「各論3. 胸部腫瘍」と「各論11.造血器腫瘍」については,項目立てを整理し,若干簡素化しました.その他,コラムとして「総論5」に「感染症(COVID-19)とがん治療」を追加しました.
本書は,学生の教科書として利用されることを目的としているため,より基礎的でわかりやすい入門書となるよう編集されています.各がんの概念,疫学,病理や臨床像,診断についての内容を充実させた一方で,複雑な病態や詳細な治療については言及していない場合もあります.本書のみで十分でない点については,『新臨床腫瘍学』(日本臨床腫瘍学会編集)をはじめとする専門的な教科書などを参考にしていただくことをお勧めします.
今後も,本書を腫瘍内科学入門のための教科書として,より一層よいものにしていきたいと考えております.ご意見などを南江堂ホームページよりお寄せいただけましたら幸いです.
2024 年11 月
『入門腫瘍内科学(改訂第4 版)』編集委員長
木下一郎