内容
2年ごとの改訂で,進歩の著しいがん薬物療法について最新の情報を提供.巻頭トピックスでは,がん遺伝子パネル検査の進歩,新しい標的分子,ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスなど,話題性の高いテーマを取り上げた.各論では新たに承認された薬剤,治療の進歩が大きいがん種や臓器横断的薬物療法,副作用対策における新知見について解説.がん治療医,一般臨床医,研修医にとって,本領域の動向把握に役立つ一冊である.
【監修の序】
がんの薬物療法は,幅広い医療分野の中で最も発展が目覚ましい分野の1つである.この10年間に内外で開発された分子標的治療薬の多くは抗がん薬である.また,ゲノム情報に基づく治療が真っ先に日常診療に取り入れられたのはがんの薬物療法である.このため,日常診療でがん治療を担う専門医や,臨床研究開発を担当する製薬企業やアカデミアの研究者が,この急速に発展する最近の薬物療法を俯瞰できるテキストを切望するようになった.
本書は,このようなニーズに応える最適の1冊として2023年に初版を発刊してから2年がたち,今回,最新情報を盛り込みアップデートを行った.今回は,76人の国内のエキスパートに「巻頭トピックス」「Ⅰ章.近年承認された抗がん薬」「Ⅱ章.近年進歩の大きい臓器別がんの薬物療法」「Ⅲ章.臓器横断的ながんの薬物療法」,および「Ⅳ章.注目すべき副作用とその対策」の5章59項目を割り当て,教科書的情報は最少に,最新情報を中心にまとめてもらった.「巻頭トピックス」には,RNA情報のパネルや造血器腫瘍専用のパネル検査,改変T細胞療法などの最新の診断薬や治療薬のトピックスを,「Ⅰ章」には14種類の国内で承認された新薬情報を,「Ⅱ章」には新薬導入やガイドライン改訂による標準治療の変化を,「Ⅲ章」には4種類の遺伝子変異陽性固形がんを,そして「Ⅳ章」には,新薬登場により注意が必要な3つの有害事象とその対策をまとめた.
本書が目指すのは,専門医や研究開発者が最新のがんの薬物療法に関する情報を漏らさず短時間に把握し,またそれを俯瞰することである.このため,エキスパートらは最新のエビデンスを凝縮し,標準治療の総論を割愛したコンパクトな内容にまとめた.本書が専門医や研究者の皆さんの知識のアップデートや,日常診療と臨床研究の事典代わりとしてお役に立てれば幸いである.
2025年2月
石岡千加史