著者紹介
ナオミ・ザック(著者):1944年,ニューヨーク市生まれ。1970年,コロンビア大学で博士号を取得。その後20年のブランクを経て,1990年,学界に復帰。ニューヨーク州立大学オールバニ校,オレゴン大学で教鞭を執り,現在,ニューヨーク市立大学リーマン校哲学教授。専門は,批判的人種理論,アイデンティティ哲学,フェミニスト理論。
河野 真太郎(翻訳):1974年生まれ。一橋大学法学部卒,2005年,東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。現在,専修大学国際コミュニケーション学部教授。専門は20世紀イギリスの文化と社会だが,関心は文化史,ジェンダー論など多岐にわたる。主な単著および単独訳として,『新しい声を聞くぼくたち』(講談社,2022年),『この自由な世界と私たちの帰る場所』(青土社,2023年),『増補 戦う姫,働く少女』(筑摩書房,2023年),『ぼっちのままで居場所を見つける』(筑摩書房,2024年),P・バーク著『文化のハイブリディティ』(法政大学出版局,2012年),T・ジャット著(T・スナイダー聞き手)『20世紀を考える』(みすず書房,2015年),W・ブラウン著『新自由主義の廃墟で』(人文書院,2022年)などがある。
内容
民主主義はどこへ行くのか?
民主主義の危機が問われるいま、その普遍的な「理念」と具体的な「実現」とはどのようなものなのだろうか。
本書は、ポスト・トゥルース的な右派ポピュリズムが席捲するように見える現代の民主主義の危機を理解し、それに応答するために、民主主義の普遍的な理念とその具体的な実現の両方に軸足を定めつつ、古代から中世・ルネサンス、社会契約論から十九世紀のマルクス主義などの進歩主義、第二次世界大戦の衝撃から二十世紀後半の社会運動、そして現在進行中の出来事へと論を運ぶ。
さらには、気候変動、パンデミック、排外主義的なポピュリズムの席捲などを見すえて、民主主義の「未来」を覗き見ようと試みる。
政治学史ではここ数十年、ケンブリッジ学派の台頭や個別的な研究の深まりのなかで、〈どう生きるべきか〉という規範的な問いはややもすれば後景に退いてしまった。
広く長い歴史的視座で簡潔にまとめられた本書は、「民主主義」を思考するための新たなスタンダードとなるはずだ。オックスフォード大学出版局の人気シリーズの待望の翻訳! 「合衆国権利章典」「人および市民の権利の宣言」「世界人権宣言」を付す。