著者紹介
レイラ・ララミ(著者):1968年、モロッコの首都ラバトに生まれた。母語はアラビア語、小学校からフランス語を習い、ムハンマド五世大学を卒業後、イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで言語学修士、1992年にアメリカのロサンゼルスに移住して南カリフォルニア大学で言語学博士を取得した。1996年からさまざまな媒体で作品を発表し、2014年に刊行した三作目の小説である本書は、「アメリカ図書賞」、「アラブ・アメリカ図書賞」、「ハーストン・ライト遺産賞」などを受賞したほか、「ブッカー賞」の一次候補、「ピュリツァー賞」の最終候補ともなった。現在はカリフォルニア大学リバーサイド校で創作の教鞭を執っている。
木原 善彦(翻訳):1967年鳥取県生まれ。大阪大学大学院言語文化研究科教授。主要訳書:マシューズ『シガレット』、クンズル『民のいない神』、ラーナー『10:04』、ヴァンデアフリートオルーミ『私はゼブラ』、バリー『終わりのない日々』(以上、白水社)、ギャディス『JR』(国書刊行会、日本翻訳大賞受賞)、ダーラ『失われたスクラップブック』(幻戯書房、日本翻訳大賞受賞)ほか多数。
内容
ピュリツァー賞最終候補作品
一五二八年、スペインの征服者(征服者にルビ:コンキスタドール)であるナルバエス率いる探検隊は、現在の米国フロリダ州と思われる場所に上陸、インディオの村で金塊を発見したことから欲に駆られ、金の出所と思われる都を探し始める。
モロッコ出身の黒人奴隷ムスタファは、かつては商売に励んでいたが破産してしまい、自らを奴隷として売り、探検隊に同行していた。探検隊は病気、物資不足、人肉食、部族の襲撃などで壊滅し、生存者は散り散りになる。ムスタファは友好的なインディオから言語と習慣を学び、旅を続ける。ムスタファは恐怖に怯えつつも、生存者の四人がすべてを失ったことで、自由平等になったと感じていた。生存者は医学的な知識によって、さまざまな部族の伝説となり、四人とも部族の女と結婚する。一同は一緒に旅をし、異なる部族を治療し、多くの信奉者を得るようになった。やがて彼らは仲間のカスティーリャ人と出会い、ヌエバ・エスパーニャに連れてこられる。それはムスタファにとって再び奴隷になることを意味した……。
モロッコ出身の作家が、実在する報告書を元に実在した奴隷の視点から冒険を再構築した傑作長篇。