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経済学と経済政策~戦後日本、その歩みの価値を求めて~
石水喜夫
著
発行年月 |
2025年06月 |
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言語 |
日本語 |
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媒体 |
冊子 |
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ページ数/巻数 |
348p |
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大きさ |
20cm |
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ジャンル |
和書/社会科学/経済学/各国の経済事情・経済史 |
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ISBN |
9784794812902 |
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商品コード |
1040420283 |
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NDC分類 |
332.107 |
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本の性格 |
学術書 |
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新刊案内掲載月 |
2025年07月3週 |
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商品URL
| https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1040420283 |
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著者紹介
石水喜夫(著者):元厚生労働省労働経済調査官。元京都大学教授。1965年生まれ。1989年に労働省入省。政策調査部、職業安定局、経済企画庁、厚生労働省労働政策担当参事官室などに勤務。官庁エコノミストとして一橋大学、大東文化大学など講師を兼務。退官して、2021年より京都橘大学経済学部教授。
内容
行政内部から主流派経済学の誤りを指摘し続けてきた著者が、
誤謬の根源と有りうべき経済社会の道筋を戦後の歩みから析出。
危機に陥った社会には魔術師が登場する。かつてナチス・ドイツには宣伝相という大臣がおり、農民や労働者の心をつかんで強力な政権を作り出した。その人物、ヨーゼフ・ゲッベルスの演説に「農民は穀物の値上げ、労働者はパンの値下げ、パン屋と食品店はより大きな利益」というものがある。
片や我が国では、安倍総理が「経済の好循環実現に向けた政労使会議」(2013年)を開催し、物価と賃金を引き上げるという途轍もない社会合意を生み出した。それまで政府は、賃金など労働条件の形成は、労使の自主的交渉によるもので、それを受けとめる立場を堅持していた。アベノミクスは「官製春闘」をその中心に抱き込んで、憲政最強の政治権力を生み出した。
リーマンショック(2008年)と東日本大震災の原子力災害(2011年)は、近代産業文明の限界と成長経済の虚構を人々に突き付けていた。しかし、それを受けとめることは重苦しく、主流派経済学にも対処能力がない。高まる国民不安に、安倍総理は「三本の矢」(2012年末)を力強く演説し、既存の政策技術を組み合わせれば、成長経済を取り戻せると国民に魔法をかけた。
戦後日本は、ケインズ理論と現代憲法を礎に福祉国家建設の道へと歩み出した。しかし、1980年代のネオリベラリズム(新自由主義)の登場で経済学の逸脱が生じ、歴史の流れを見失って、今日に至っている。経済政策混乱の根源に、主流派経済学の誤りと政治思想の空白が横たわっていることを見抜かねばならない。
官庁エコノミストだった著者は、旧「労働白書」を通じて、行政内部から主流派の「構造改革」に挑み、新評論からは『ポスト構造改革の経済思想』(2009年)など三つの著作によって問題提起を続けてきた。本書はその第四弾であり、退官した著者が示す渾身の完結編である。(編集部)