内容
昨今エビデンスに基づくケアへの流れが促進される中で、研究を統合し特定の治療を推奨する臨床ガイドラインは極めて重要なものとなっている。
原書の初版は2000年、第2版は2009年に出版され、日本語訳もそれぞれ2005年と2013年に刊行された。本原書は2020年9月に刊行された第3版である。どれも科学的エビデンスに基づいたPTSD治療ガイドラインの提供という目的は旧版と共通しているが、内容構成は大幅に変更されている。
本書の特徴は、ISTSS(国際トラウマティック・ストレス学会)によるPTSDの予防と治療ガイドラインにおける治療推奨(第7章)を掲載していることである。旧版以降のトラウマ焦点化治療のPTSDに対する強固なエビデンスは揺らぐことはなく、本版では初めてトラウマ焦点化治療の技法ごとに[PE(第12章)、CPT(第13章)、EMDR(第14章)、認知療法(第15章)]章が設けられた。これらは実証的な裏付けにより「強い推奨」を得、これ以上は望めないというほど技法に精通している。
全体を通読していただければ、PTSDの疫学とアセスメントの最新の知見から始まって、PTSDの治療介入と周辺テーマをめぐる現在と近未来の全体像を、複合的視点で俯瞰することができるだろう。