内容
本書では最近になって起こった事故をできるだけとり上げるようにした。また,事例分析においては,日本国内の事故を主としてとり上げて分析している。従来のテキストでは,アメリカの工学倫理のテキストに収められている事例(チャレンジャー号事件など)が利用されがちだったが,アメリカと日本では法や社会制度は異なるし,企業の慣習やメンタルな要因も異なってくる。日本独自の工学倫理ということも視野に入れて,多くの国内の事故を事例としてとり上げくわしく分析した。
さらに,本書の構成についても全体の流れがつかめるように配慮したつもりである。すなわちまず,歴史的にみて工学がいかに発展してきたかを眺め(1章),そのなかで現れてきた安全性や設計などの興味深い問題を,国内の事件や事故をふまえながら解説する(2章),さらに,工学倫理と他の応用倫理との関連を探りながら内容を深め(3章),最後に工学と倫理を社会的観点から捉えなおしてみる(4章)という流れである。(「あとがき」より抜粋)