著者紹介
ジョゼ・ジョルジェ・レトリア(著者):ジョゼ・ジョルジェ・レトリア José Jorge Letria
詩人、作家、戯曲家、ジャーナリスト。1951年カスカイス生まれ。ユネスコ国際賞、カストロ児童文学賞など。児童向けの作品はEU「異文化間教育のための書籍と読書」リストに掲載されている。EU文学賞審査委員長(2012)、レジスタンス音楽家でもある。息子アンドレとの合作に『もしもぼくが本だったら』(宇野和美訳、アノニマ・スタジオ刊)などがある。
木下 眞穂(翻訳):木下眞穂 Maho Kinoshita
ポルトガル語翻訳家。上智大学ポルトガル語学科卒業。訳書にサラマーゴ『象の旅』(書肆侃侃房)、アグアルーザ『忘却についての一般論』(白水社)、タヴァレス『エルサレム』(河出書房新社)、絵本『どうぶつせんきょ』(ほるぷ出版)など。ペイショット『ガルヴェイアスの犬』(新潮社)で第5回日本翻訳大賞受賞(2019)。
アンドレ・レトリア(イラスト):アンドレ・レトリア André Letria
画家。ジョゼの息子。1973年リスボン生まれ。グルベンキアン賞、ブラティスラヴァ世界絵本原画展、ボローニャ国際絵本原画展でのイラストレーションやデジタル(アニメーション)賞など受賞多数。
内容
戦争は、何も知らない人たちの柔らかな夢に入りこむ。戦争は、物語を語れたこともない。--気づかぬうちに進行する病気のように日常をずたずたにし、野心や憎しみを糧に貪欲に育つ戦争。自らも独裁政権に抗した、ポルトガルを代表する文学者の詩とその息子による絵で、戦争の残酷な本質を描く。今こそ読まれるべき、衝撃的な絵本。
■訳者からのメッセージ
「戦争」とは何でしょう。何から生まれ、どう大きくなり、私たちに何をするのでしょうか。
この絵本は、短い文章とシンプルな絵で「戦争」という化けものの正体を暴いていきます。ですが、この絵本に物語はありません。「戦争は、物語を語れたことがない」からです。この絵本を手に取って「こわい」と感じる人もいるかもしれませんが、それは、作者の伝えたいことがまっすぐ届いている証拠です。
今、世界で起きていることを考えながらこの絵本を読んでほしいと思います。
■編集部より
まるで知らぬうちに進行してしまった病のように、密かに忍び寄り、瞬く間にはびこってしまうもの、それが戦争。その正体を読む人に突きつけるこの絵本は、ポルトガルを代表する文学者の父と、その息子の合作です。
父のジョゼ・ジョルジェ・レトリアは、40年にもわたるヨーロッパ最長の独裁体制に抗してきたレジスタンス音楽家であり、詩人、ジャーナリストでもあります(2024年はポルトガルで独裁体制を終わらせたカーネーション革命から、50周年にあたります。ジョゼも革命の中心人物でした)。「戦争とは何か」を考え続けてきた文学者の静かで力強い詩は、息子のアンドレによる印象的な絵と共に、戦争の残酷さや恐ろしさを暴いていきます。
淡々とした静かな印象なのにとても衝撃的で、読後にも一言では表せない余韻やしこりが残ります。不信や憎悪が連鎖する世界をどうしていけばよいのか、大切なものとは何なのか、読む人が考えてしまうような絵本です。