内容
知識を獲得する主要な方法の一つは,図書をはじめとする文献を参照する,あるいは読むことである。
本書の原書名に使用されている“Second-hand Knowledge”とは,主として文献や専門知識を有する他者から得られる間接的知識を指している。この間接的知識を獲得する主要な場が図書館である。それゆえ,間接的知識の獲得は,必然的に文献や図書館との関係において議論される。
文献であれ,他者からであれ,それらの知識資源から知識を獲得する場合,何らかの選択が働いているはずである。本書は,文献や他者という知識資源の典拠性(信頼性,妥当性,真理性等)を基礎に,その選択の問題に焦点をあてたものである。
21世紀になり,インターネットの匿名性と無典拠性が蔓延る現代の情報世界において,パトリック・ウィルソンが紐解いた「知の典拠性(Cognitive Authority)」はいっそう重要な概念として受容されている。