内容
本書は,大学数学科での集合論および位相空間論の解説書・演習書である。
1~3章は集合論の初歩と距離空間の導入である。楽しい問題をたくさん集め,数学に於ける「集合」の,様々な見方や考え方・扱い方を導くように心掛けた。4~13章は標準的な位相空間の話題を取り上げる。4~6章で用語の準備を進めたのち,7章以降から重要な空間・写像・位相を続々と導入する。14章と付録Aは他の本では扱われることの少ない話題である。自由度が大きくまとまりにくい話題だが,多くの重要な例を挙げた。付録Bは選択公理に関わる部分の証明をまとめたものである。本文でいくつか使われる議論で,読者の便利のためである。
本書の大きな特長は,演習問題の多彩さ,そして解説の丁寧さである。書籍全体で例題は130問ほど,演習問題は300問近く出題されるが、それら全問に対して懇切丁寧な解説を行なっている。問題解答のページは約60ページほどにものぼり,位相空間に関する類書と比較しても群を抜いているだろう。設問の多くは,本文を丁寧に読み進めれば独学でも取り組めるような基本的なものである。初めのうちは全てを解ききることは難しいかもしれないが,まずはペンを持って取り組み,解答例を見ながら納得し理解することで,「面白い」と感じてもらえることを期待している。全体を通して,平面や空間での概念を想像しやすいように,随所に図版を多用することで視覚的な理解にも配慮した。