内容
モーセに始まる古代イスラエルの預言者たちは,ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の源泉となった人々である。預言者の宗教の最大の特色は,超越者の啓示を直接受領して活動するところにある。ここに彼らの宗教体験の普遍性の根拠がある。さらに彼らの宗教の特色は,直接的啓示によって,あらゆる権力や伝統から自由になるところにある。しかし,その結果逆に自らの権威を絶対化し,再び強固な伝統を形成する危険も持っている。東洋の宗教である仏教も,その教えのゆえに,預言者敵宗教の一つに数えることができる。西方の普遍的宗教の源となった古代イスラエルの預言者たちを学ぶことは,もう一つの普遍敵宗教である仏教との対比を通して,現代世界の切迫した課題である諸宗教間の真剣な対話に新しい可能性を切り開くであろう。