内容
楽器や楽譜、演奏風景を描いた壁画・絵画・彫刻など、七二〇枚を超える圧倒的な図像資料を収録。詳細な解説を付して、日本の雅楽や楽制にも影響を与えた中国音楽の歴史を通覧する、レファレンスとして最適の一書。【日本語版監修のことば】解説書としても 図鑑としても便利な参考書明木茂夫(中京大学教授・中国音楽学)原著『中国音楽史図鑑』は一九八八年に刊行されて以来、本国 では信頼に足る音楽史の基本書籍として広く読まれてきた。二〇 〇八年に修訂版が出て、現在はこちらが普及している。修訂版を 旧版と比べてみると、かなりの図版が増補されており、もちろん 印刷も鮮明になっている。本書はその修訂版の翻訳である。 本書は「図鑑」とあるとおり、出土品・楽器実物・絵画・壁画・ レリーフ・塑像彫像など、多数の図版を中心にして中国音楽史を 通覧する、というものである。使用されている写真は、中国芸術 研究院音楽研究所が各文物の所蔵機関から直接提供を受けたもの が多く、それぞれの標準となる鮮明な写真が収録されている。楽 器の形状や奏法はもちろんのこと、何より音楽の演奏される様々 な「場」までが視覚的に理解できるのは、やはり本書が単に楽器 図鑑なのではなく、あくまで音楽史図鑑であるためだろう。 ところがその一方、本書は図鑑としては解説本文が充実して いて、情報量が多いことも指摘しておかねばならない。本文に は、出土品や古楽器について熟知した人ならではの詳細な記述 も多く、主編者の劉東昇・袁荃猷両氏はじめ、各時代・各分野 に通じた中国芸術研究院音楽研究所のスタッフの面目躍如と いったところであろう。このように、詳細な記述が豊富な図版 と組み合わされているおかげで、本書は中国音楽史を学ぶ上で の基本となる通史として用いることができる。 もしも読者が、様々な時代の様々な楽曲、楽器、そして音楽 関係資料に興味を持ち、それについて調べてみようとする際に は、解説書として、あるいは図鑑として、大変便利な参考書と なることと信ずる。