脱アイデンティティ
内容
目次
序 章 脱アイデンティティの理論[上野千鶴子] 1 はじめに 2 「アイデンティティ」の起源──エリクソンの「アイデンティティ」概念 3 フロイトの「自我」心理学 4 パーソンズのパーソナリティ・システム 5 バーガーのアイデンティティ論 6 ゴフマンとアイデンティティ管理 7 構築主義のアイデンティティ理論 8 アイデンティティからエイジェンシーへ 9 アイデンティティを超えて 10 おわりに 第一章 脱アイデンティティの政治[伊野真一] 1 アイデンティティの政治のオルタナティヴ 2 アイデンティティの生物学的基盤論──性的指向をめぐって 3 カテゴリーの政治──差別語「オカマ」をめぐって 4 カミングアウトの脱アイデンティティ化 5 日本におけるクィア理論受容のバイアスと問題点 6 おわりに 第二章 物語アイデンティティを越えて?[浅野智彦] 1 自己の物語性と同一性 2 多元化する自己 3 自己物語の多元性 4 物語的アイデンティティを越えて? 第三章 消費の物語の喪失と、さまよう「自分らしさ」[三浦展] 1 大きな物語の喪失と消費の変質 2 物語不在の時代から生まれたマニュアル志向 3 マニュアル志向から生まれた「自分探し志向」 4 「自分らしさの神話」 5 永遠志向と自己改造志向 6 東電OLコンプレックス 7 「複数の自分」と「ぷちナショナリズム」 8 食べることが面倒くさい 9 食欲が不快に感じられる 10 欲求の統合ができない 11 性欲の減退と消費の低迷 12 記号消費の対象の逆転 13 「女性らしさの神話」の溶解と「フツーでいい」私 第四章 解離の時代にアイデンティティを擁護するために[斎藤環] 1 「解離」の時代 2 なんのための解離か 3 解離の集団的受容 4 ボーダーライン・ムーブメント 5 分裂から解離へ 6 流行語と「敵」の問題 7 「心理学化」と解離の前景化 8 ホムンクルス的同一性? 第五章 非・決定のアイデンティティ――鷺沢萌『ケナリも花、サクラも花』の解説を書きなおす[平田由美] 1 問題の所在 2 非・決定のアイデンティティあるいは identity in the making 3 《民族の血》 4 異質(ヘテロジニアス)なアイデンティティのための異種混淆言語(ヘテログロッシア) 5 ごちゃまぜ言語の可能性 第六章 言語化されずに身体化された記憶と、複合的アイデンティティ[鄭暎惠] 1 他者の記憶とアイデンティティ 2 他者の記憶と“位置” 3 アイデンティティの政治に潜む陥穽 4 再生手段を失った記憶のゆくえ 5 “言語化されずに身体化された記憶”への旅 6 終着点なき対話──「遺書」は解読可能か 7 コミュニケーションの困難と、実存の不/可能性 8 「不完全な言葉」しか持たないことの力 9 国家語からの自由とエロス 10 「あるがままの私」が、存在してかまわない 11 「私」とは誰か 12 テレサ・ハッキョン・チャへの呼応 13 言語間の権力格差 14 言葉をもたないこと/がらを表現する 第七章 母語幻想と言語アイデンティティ[小森陽一] 1 「日本人」と「母語意識」 2 「アイデンティティ」概念の歴史性 3 「英語帝国主義」に抗して 第八章 アイデンティティとポジショナリティ――一九九〇年代の「女」の問題の複合性をめぐって[千田有紀] 1 はじめに 2 アイデンティティとポジショナリティ 3 フェミニズムとポジショナリティ/アイデンティティ 4 「女」というカテゴリー 5 おわりに 終 章 脱アイデンティティの戦略[上野千鶴子] 1 はじめに 2 アイデンティティ理論の展開と応用 3 解離と「複数の自己」 4 言語とアイデンティティ 5 日本語/英語/ナショナル・アイデンティティ 6 ポジショナリティと責任主体 あとがき[上野千鶴子] 事項索引 人名索引