内容
日本を代表する巨大流通コングロマリット、セブン&アイ・ホールディングス。長く同社を率いてきたカリスマ経営者の鈴木敏文氏が、2016年5月に、経営の表舞台から退いた。鈴木氏が退任に至るまで、異例の事態が続いていた。中核事業会社であるセブン-イレブン・ジャパンの社長人事に端を発した"お家騒動"は、「物言う株主の暗躍」「創業家の反撃」「取締役会内部の分裂」「カリスマが求めた世襲」など、さまざまな形で報じられた。だが、日経ビジネスは改めて問いたい。鈴木敏文氏の退任とは、そんな近視眼的な言葉で済ませてもよいものなのか。日本にコンビニエンスストアという新しいインフラを生み出し、メーカーが支配していた流通業界の力関係を逆転させた立役者が、経営者・鈴木敏文氏である。一人のサラリーマンは、どのようにカリスマ経営者となり、巨大な流通コングロマリットを率いるようになったのか。そしてどんな壁に直面し、長い年月をかけて築き上げた「帝国」を去ることになったのか。本書では2つのアプローチで真相に迫った。1つは、鈴木氏本人の肉声である。日経ビジネスは鈴木氏の退任以降、述べ10時間に渡って本人への単独インタビューを重ねてきた。鈴木氏自身がその半生を振り返りながら、真相を語った。もう1つは、セブン&アイの「2人のトップ」を知ることである。鈴木氏本人と、イトーヨーカ堂創業者でありセブン&アイのオーナーでもある伊藤雅俊氏。鈴木氏はトーハンからヨーカ堂に転じ、創業者である伊藤氏の信頼を勝ち取って幹部として台頭した。日経ビジネスは1970年代以降、40年以上に渡って伊藤氏と鈴木氏の取材を重ねてきた。歴史を振り返れば、「2人のトップ」の絶妙かつ微妙な関係がどのように誕生し、維持されてきたのかを知ることができる。創業オーナーとサラリーマン経営者。セブン&アイが巨大グループに成長する過程で、2人による特殊な統治形態が必要だったことは、本書を読めばよく理解できるはずだ。戦後の日本を変えたカリスマ経営者の半生を、本書で総括する。