内容
池澤夏樹と黒田征太郎という日本を代表する2人の作家による戦争と平和を伝える新たな絵本が誕生。沖縄のガマ(洞窟)をテーマに暗い洞窟の中で命を落とした人々の悲しみを、一人の少年の視線を通して伝えます。さらに巻末では、後に「ひめゆり学徒隊」と呼ばれる、看護要員として沖縄陸軍病院に動員され、沖縄戦で亡くなった師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒たちの名前を紙碑として刻みます。
池澤夏樹が沖縄のガマを舞台とした物語を紡ぎ、黒田征太郎が闇を描いた、忘れてはいけない物語。
【あらすじ】少年はビンキと名付けたヤギを、毎朝登校まえに山へと連れて行きます。木につないでおくとビンキはその日一日あたりの草を食べて過ごすのです。学校が終わったら家につれもどす。それが少年の日課でした。ところがその朝、ビンキは縄を抜けてどんどん走っていきます。やがてビンキは少年を導くかのように大きなガマの中へ。気づくと白い光を放っているビンキを目印に、少年は真っ暗なガマの奥へと進みます。ビンキがふと立ち止まると、そこには全身がやわらかに光る、若い女の人がいました。人を見るとすぐに突っかかるビンキが懐く様子をみて、少年は不思議と恐くはありません。女の人は沖縄であった悲しい物語と、一つの願いを少年へと語り始めました。