著者紹介
ベス・メイシー(著者):バージニア州ロアノークに拠点を置き、30年にわたり取材活動をしているアメリカのジャーナリスト。著書の『Factory Man』(2014)、『Truevine』(2016)は高い評価を得、ベストセラーとなった。ハーバード大学のジャーナリストのための特別研究員『ニーマン・フェローシップ』を含む12を超える全米での賞を受賞。本書はロサンゼルス・タイムズ書籍賞を受賞し、カーネギー賞の候補となった。
神保哲生(翻訳):ジャーナリスト/『ビデオニュース・ドットコム』代表
東京生まれ。AP通信などの記者を得て1994年独立。以来、フリーのビデオジャーナリストとして活動を続け、2000年日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『ビデオジャーナリズム』(明石書店)、『PC遠隔操作事件』(光文社)など、訳書に『食の終焉』(ポール・ロバーツ著、ダイヤモンド社)、『暴君誕生』(マット・タイービ著、ダイヤモンド社)などがある。
内容
タイガー・ウッズも見舞われ、プリンス、トム・ペティ、そして大谷翔平投手のチームメイトのスキャッグス投手の命を奪った鎮痛薬の罠!
本書は今やアメリカ史上最悪の麻薬問題となっているオピオイド蔓延の実態を余すことなく描いたドキュメントだ。今や依存症者数が400万人、年間死者も4万人を超えるオピオイド依存症の震源地となったアパラチア地方で地元紙の記者を務めていたベス・メイシーは、「夢の鎮痛剤」として大々的に宣伝されていた処方薬のオキシコンチンが、地域の高校生から働き盛りのビジネスマン、主婦、そして高齢者にいたるまで、無差別に人々をオピオイドも魔力に引き込んでいく様を克明に記録し、5年間にわたる取材の成果をこの一冊にまとめた。
本書にはオピオイドによって生活を根底から破壊された人々やその家族のほか、問題解決の前に立ちはだかる数々の政治的な壁、依存症を引き起こすことが分かっていながら欺瞞に満ちた営業攻勢をかけ続けた欲深い製薬会社と堕落した医師の癒着した関係、問題を過小評価した結果、全てが後手後手に回った行政の不作為、そして多勢に無勢を覚悟で問題に立ち向かう被害者の遺族や地域のボランティアたちの姿が、いずれも等身大で描かれている。
アメリカは明らかにオピオイド問題への対応に失敗した結果、今まさにその大きなツケを払わされている。なぜアメリカはオピオイド依存症をこれほどまでに状況が悪化するまで放置したのか。そこから日本が学ぶべき教訓とは何か。薬物依存症の蔓延を対岸の火事としないための必読の書だ。