内容
原子論と連続論とは,それぞれエピクロスとストアの自然学の根拠であった。しかしヘレニズム時代には,彼らの関心は倫理学に向けられた。エピクロスは,身体の無苦と精神の平静を説き,ストアは脱感情を説いた。この倫理的関心の相違は,知識論とくに感情論の相違となった。エピクロスは感情を真理標識としたのに対し,ストアは感情を病める理性として退けた。彼らの哲学は独断論ではあるが,知識論・自然学・倫理学の三部門に初めて統合体系を樹立したことは大いに評価されてよい。その故にまた,後世にその影響を残したのである。