著者紹介
シルヴィー・ジェルマン(著者):[著者紹介]
シルヴィー・ジェルマン(Sylvie Germain)
1954年フランスのシャトールー生まれ。父親が副知事だったため、幼少時より家族で町を転々としながら育つ。絵画などの芸術に興味を持つ一方、大学では哲学を専攻。パリの文化省で働きながら短篇集を執筆し、ガリマール出版社に送る。この短篇集が刊行されることはなかったが、これを読んだ作家のロジェ・グルニエに書き続けるよう励まされ、1985年にLe Livre des nuitsを刊行。この作品はグレヴィス賞をはじめ、六つもの文学賞に輝いた。三作目のJours de colère(1989)でフェミナ賞を受賞。これまでに30作以上の小説を執筆している。小説のほか、エッセイや紀行文、写真集など、作品は多岐にわたる。邦訳に〈高校生が選ぶゴンクール賞〉受賞の『マグヌス』(みすず書房、2006年)がある。
岩坂 悦子(翻訳):[訳者紹介]
岩坂 悦子(いわさか・えつこ)
2011年、上智大学文学部フランス文学科卒。2013年、上智大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士前期課程修了。2017年、同大学院博士後期課程中退。訳書にダヴィド・フェンキノス『シャルロッテ』(白水社)がある。
内容
いくつもの秘密は家族をどこへ連れていくのか
『マグヌス』で知られるフランスの著名な小説家が、互いの関係を模索する再構成家族の姿と秘密を詩的に描いた中篇小説。
幼い頃から母のいないリリは、赤ん坊の頃の自分の写真を見て、自分はいったいどこから来たのか、母はどこへなぜ行ってしまったのかと疑問を抱いてきた。父の再婚により、新たに四人の兄姉ができるが、継母ヴィヴィアンや異母兄姉との関係を模索しながらも心からは馴染めずにいた。
ある日、家族そろって出かけたピクニックで写真を撮るため、子どもたちはぎゅうぎゅうに身を寄せ合った。それが悲劇につながるとは知らずに……。
やがて兄姉たちがそれぞれの道に進んでいく一方、リリはどこへ向かえばいいのかわからず、左翼グループと共同生活をしてみたり彫刻に打ち込んでみたりするものの、どれも長続きせずさまよう。
タイトルが示すとおり、小さいがひとつひとつが何らかの働きや意味をもつ多くの出来事の連なりで構成されている。リリは愛する人を見つけ、自分の居場所にたどり着けるのか。知りたかった秘密は明らかになるのか。喪失を抱えながらも、時の重なりを感じ、自己や他者と向き合うことの尊さを静謐に描く。