内容
線形代数のテキスト・参考書はおびただしい数にのぼりますが、それらの多くは純粋数学の立場から論じられていて、統計学、ましてや多変量解析への応用に触れたものは多くはありません。一方、たいていの多変量解析のテキスト・参考書は、はじめのほんの数ページを“線形代数の基礎”のためにさくか、“必要最小限の線形代数”を巻末に付録として載せているにすぎません。しかも、冒頭や巻末付録に書かれている線形代数と本論で使われる線形代数に大きな隔たりが見られることもしばしばです。
以上のようなことから、線形代数と多変量解析を橋渡しするようなテキスト・参考書、多変量解析に特化した線形代数のテキスト・参考書となるよう、本書は執筆されました。
本書の主な特色
線形代数にとどまることなく、多変量解析の理解に必要な基礎の数学や、統計学の基礎についてもかなりのページをさいて解説した。
“この式、この考え方は、多変量解析のどの手法において使われるか”といった式・考え方・公式の用途を随所に示した。
運用のまちがわれやすい公式などについては、その都度注意を喚起した。
必要な項目(たとえば連立1 次方程式)については繰り返しをいとわず、何回となく取り上げた。
その反面、線形代数の中では必須であり興味がもたれるテーマや定理であっても、多変量解析でさしあたり不要なものは思い切って割愛した。読者にいたずらな負担をかけるのを避けるためである。