「個性」を煽られる子どもたち~親密圏の変容を考える~(岩波ブックレット)
土井 隆義 著
目次
一 親密圏の重さ,公共圏の軽さ ―― 子どもの事件から見えるもの ―― 1 親密圏における過剰な配慮 佐世保の事件から/「親友」という関係性/友だち関係の重さと不安 2 公共圏における他者の不在 少年による凶悪犯罪の実態/「装った自分」から「素の自分」へ 3 「つながり」に強迫された日常 過剰な配慮と無配慮/蔓延する「優しい関係」/現代的な「いじめ」の特徴 二 内閉化する「個性」への憧憬 ―― オンリー・ワンへの強迫観念 ―― 1 生来的な属性としての「個性」 素の「キャラ」の魅力/衰退する社会的個性志向/社会化のリアリティ 2 内発的衝動を重視する子どもたち 〈善いこと〉から〈良い感じ〉へ/生理的感覚としての「自分らしさ」/断片化した自己のパラドクス 3 「自分らしさ」への焦燥 オンリー・ワンへと煽られる子ども/歴史感覚の欠如と「感動」志向/個性に対する欲望の無限肥大 三 優しい関係のプライオリティ ―― 強まる自己承認欲求のはてに ―― 1 「自分らしさ」の脆弱な根拠 ジャイロスコープを欠いた「個性」/強まってきた自己承認の欲求/「見られていないかもしれない」不安 2 肥大化した自我による共依存 〈良い感じ〉の関係/共依存から派生する暴力/ジェンダーを反映した関係性 3 純粋な関係がはらむパラドクス コミュニケーションの困難な時代/純粋な関係への期待値の高さ/「心の教育」に潜在する問題 引用文献