内容
森のなかの妖精といわれる細胞性粘菌。それは自然界のなかで力強くそしてしなやかに生きている。この粘菌はまた、さまざまな生命現象を解明する上で研究材料としてのメリットを実に沢山もっており、まさにパワフルな存在である。本書では、このモデル生物そのものがもつ面白さや、これまでの研究で明らかにされた科学的成果とその問題点が、著者の体験に基づくエピソードを交えながら紹介されている。
サイエンスにおいては“必然性”に重きが置かれることが多い。しかし、“偶然性”もまた非常に大切であること、それを如実に示す具体例が本書では分かりやすく解説されている。本書は基本的には啓蒙書であるが、内容面での学問的香りはきわめて高く、研究者や院生・学生(含、高校生)に広く有益な示唆を与えるにちがいない。