内容
「なぜ、エゴイストであってはいけないのか?」 この素朴な問いかけの根源性を自覚するところから、正義の探究は始まる。本書は、現代日本社会のなかでの正義を原寸大の姿において問いなおし、異質な自律的人格の共生という社交体の理念を求めて「会話としての正義」の構想を提示する、現代自由学芸の騎士による挑戦の書である。さまざまな欲望を内に秘めながら善き生を求めている我々は、破滅への招待状を手にした現代世界の中で、多様な選択肢を前に絶えず日々の生の営みを決断している。正義の名のもとに、我々はいったい人と人とのいかなる社会的結合様式を守ろうとしているのか。リベラリズムの積極的社会像を豊かな想像力によって展開する。サントリー学芸賞受賞。