日本の思想(岩波新書 青版 C-3)
丸山 真男 著
内容
目次
Ⅰ 日本の思想 まえがき 日本思想史の包括的な研究がなぜ貧弱なのか 日本における思想的座標軸の欠如 自己認識の意味 いわゆる「伝統」思想と「外来」思想 開国の意味したもの 一 無構造の「伝統」その㈠──思想継起の仕方 その㈡──思想受容のパターン 逆説や反語の機能転換 イデオロギー暴露の早熟的登場 無構造の伝統の原型としての固有信仰 思想評価における「進化論」 二 近代日本の機軸としての「國體」の創出 「國體」における臣民の無限責任 「國體」の精神内面への滲透性 三 天皇制における無責任の体系 明治憲法体制における最終的判定権の問題 フィクションとしての制度とその限界の自覚 近代日本における制度と共同体 合理化の下降と共同体的心情の上昇 制度化の進展と「人情」の矛盾 四 二つの思考様式の対立 実感信仰の問題 日本におけるマルクス主義の思想史的意義 理論信仰の発生 理論における無限責任と無責任 おわりに Ⅱ 近代日本の思想と文学 ──一つのケース・スタディとして── まえがき 政治─科学─文学 一 明治末年における文学と政治という問題の立てかた 文学の世界をおそった「台風」 「社会」の登場による走路の接近 マルクス主義が文学に与えた「衝撃」 文学者に焼付けられたマルクス主義のイメージ 昭和文学史の光栄と悲惨 政治(=科学)の優位から政治(=文学)の優位まで 二 プロ文学理論における政治的および科学的なトータリズム 政治的と図式的 政治過程におけるエモーションの動員 政治における「決断」の契機 思考法としてのトータリズムと官僚制合理主義 政治の全体像と日常政治との完全対応関係 方法的トータリズムの典型 政治(=科学)像の崩壊──転向の始点と終点 日本の近代文学における国家と個人 「台風」の逆転と作家の対応の諸形態 旧プロ文学者における文学の内面化と個体化 対立物(文学主義)への移行契機 三 文化の危機への国際的な対応 各文化領域における「自律性」の摸索 政治・科学・文学における同盟と対抗の関係 科学主義の盲点 トータリズムの遺産の否定的継承 「意匠」剝離の後に来るもの おわりに Ⅲ 思想のあり方について 人間はイメージを頼りにして物事を判断する イメージが作り出す新しい現実 新しい形の自己疎外 ササラ型とタコツボ型 近代日本の学問の受け入れかた 共通の基盤がない論争 近代的組織体のタコツボ化 組織における隠語の発生と偏見の沈澱 国内的鎖国と国際的開国 被害者意識の氾濫 戦後マス・コミュニケーションの役割 組織の力という通念の盲点 階級別にたたない組織化の意味 多元的なイメージを合成する思考法の必要 Ⅳ 「である」ことと「する」こと 「権利の上にねむる者」 近代社会における制度の考え方 徳川時代を例にとると 「である」社会と「である」道徳 「する」組織の社会的擡頭 業績本位という意味 経済の世界では 制度の建て前だけからの判断 理想状態の神聖化 政治行動についての考え方 市民生活と政治 日本の急激な「近代化」 「する」価値と「である」価値との倒錯 学問や芸術における価値の意味 価値倒錯を再転倒するために あとがき