内容
TRON とは"The Realtime Operating System Nucleus"(実時間処理に適したオペレーティング・システムの核) の略である。しかし、TRON プロジェクトは単にOSを作るというだけのプロジェクトではなく、90年代(これから)の技術水準をにらみながら、VLSI、OS、コンピュータと人間との付き合い方のルールであるマンマシン・インタフェースまでも作り直すという壮大なプロジェクトである。
製品ができてから対応する社会デザインが行なわれるといった従来の科学技術の導入ステップではなく、TRON ではまず社会デザインを行なってからそれを製品の開発にフィードバックしようとしている。このような点や、個々の性能向上や技術進歩だけでは解決できない、従来の統一的に作られていなかったためのコンピュータの歪みに対して、コンピュータ産業全体としての調整を行なうことにより対処しようとしていること、さらに21世紀の社会を前提とし、コンピュータをコミュニケーションの道具ととらえて、多国語やマルチメディアなどの機能を持たせていること、など多くの新しい概念をTRON プロジェクトは含んでいる。
本書は主にエンジニアのためのTRON の入門書である。TRON プロジェクトがどのような技術的な問題点の把握を出発点としているのか、またコンピュータ周辺の技術をどのように見ているのか、といったことについて突っ込んだ記述をしている。