内容
符号理論の研究は1948年にC. E. シャノンによって発表された情報理論の論文A Mathematical Theory of Communication(Bell System Tech. J.、 1948)を出発点としている。
1950年にハミング符号が考案され、1960年頃にはBCH符号やリード・ソロモン符号が考案された。ゴッパは1970年にゴッパ符号、そして1981年に論文Codes on algebraic curves(Soviet Math. Dokl.、 1981)において代数幾何符号を定義した。これ以後、今まで制約の多かった符号構成に対して、代数幾何符号は比較的構成しやすく信頼性が高いことが分かってきた。最近では代数幾何符号の理論が活発に研究され、それがすぐに実装されるという段階に至っており、多くの論文が発表されている。このような状況の中で、シュティヒテノス氏は代数幾何学(または数論)における関数体に注目し、代数関数体の理論によって純代数的に符号理論が構成できることを示した。それをまとめたのが本書である。
符号理論の実用化のためには、信頼性の高い代数幾何符号の数学的な理解が必須であるが、代数幾何学自体を学ぶことには大変な時間と努力が必要となる。そこで、本書では、代数幾何のなかで関数体の理論に特化した手法を用いることで、最短の労力で代数幾何符号の理解を目指すやり方をとっている点が特色となっている。関数体を用いた本書の構成だと、通常の学部の代数学を学んでいれば本書のみで独習できる。
本書は、理論に興味をもつ純粋数学者に有用である一方で、符号を実装する技術者にとっても例が多く読みやすい。特に、第2版になって演習問題が非常にたくさん付け加えられたが、これらの問題は具体的な曲線の方程式であり、実用的である。